人質の朗読会

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本棚登録 : 3021
レビュー : 622
著者 :
ktoさん 小説   読み終わった 

8編を読む間、朗読会を盗聴していた特殊部隊の兵士が、あるいはラジオの前の人々が、人質の聴衆が、きっとそうしただろうように、そっと息を詰めて全神経を以って耳を傾けているような心地がした。

面白みのない8編が、暫しの後に死亡することを知らぬ人質による朗読会の様相を呈して初めて、またそれを特殊部隊のある兵士が聴衆となって耳を傾けていた事実を加味して初めて、緊張感を持って耳を傾けるものとなる。

息遣いの音も響かせてはならないような小さな緊張感がこの小説の本質のような気がしてならない。読後は、暗がりから躊躇いがちな拍手を聞くような心地がする。

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内容

地球の裏側でゲリラに襲撃され誘拐された遺跡観光ツアー参加者7人と添乗員。救出作戦の手抜かりがあったか、人質は全て死亡した。
ゲリラグループを盗聴していた兵士の自己判断から遺族の元にわたったテープが、2年を経て、ラジオ電波に乗った。
人質たちが退屈な時間を紛らわすために、一人ずつなにか一つ思い出を書いて朗読し合おうと始めた、朗読会がラジオから流れ出す。

面白みも、ヤマもオチもない、感動できず、何の感想も覚えない。人質たちがかつて経験し、彼等を構成する元となった、それでもただの思い出話。
それが人質にとってはどんなに大切な思い出であろうと目の前で語られたとしたら、つまらなくその場を去ってしまうような、ただの小さなドラマ。

最後に付け足されたのは盗聴していた兵士の思い出話。
ふっと優しく現実世界に揺り戻される。

第1夜 「杖」
第2夜 「やまびこビスケット」
第3夜 「B談話室」
第4夜 「冬眠中のヤマネ」
第6夜 「槍投げの青年」
第7夜 「死んだおばあさん」
第8夜 「花束」
第9夜 「ハキリアリ」 

レビュー投稿日
2012年8月2日
読了日
2012年8月1日
本棚登録日
2012年8月1日
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