向日葵の咲かない夏 (新潮文庫)

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本棚登録 : 16983
レビュー : 2466
著者 :
nakamuraさん ミステリー   読み終わった 

太陽に向かってひた向きにまっすぐ咲く向日葵は正義の象徴と言われている。そういった経緯から弁護士のバッジには公平・公正を表す天秤の背景に向日葵が描かれている。

しかし、そんな難しい概念を考えなくても、世間一般のイメージでは、向日葵と言えば夏、夏と言えば向日葵で事足りるだろう。
夏の風物詩として向日葵は必要不可欠な存在であり、私たちの夏の思い出には必ず側に向日葵があるのである。

そんなことを考えたうえで、本作のタイトルを見る。実に爽やかで青春ストーリーが展開されるのかな?と思う読者もいるかもしれない。
そして、あらすじを見る。


一学期の終業式の日、欠席したS君にプリントを届けるためにS君の家を訪れたミチオ。呼び鈴を鳴らしても応答がなく、中に入ってみると、S君は首を吊って死んでいた。

急いで学校に戻り、担任の岩村先生に伝え、ミチオは一旦家に帰される。その後、岩村先生と2人の刑事が家に来るが、ミチオにもたらされたのは、“Sの死体なんてなかった”という知らせだった。「嘘じゃない、確かにS君の死体を見た」と懸命に主張し、結局行方不明事件として捜査されることとなった。

それから1週間後、ミチオの前にS君があるものに姿を変えて現れ、“自分は殺されたんだ”と訴える。ミチオは妹のミカと共に、S君を殺した犯人を探すこととなる。

タイトルとあらすじだけを見ると、ストーリーは夏休みを迎えた小学生の爽やかな冒険物語、不思議な一夏の思い出辺りなのかな?って思うかもしれない。しかし、そんな先入観を持って本作を読み始めると肝を潰される。

内容は極めて陰惨である。動物虐待に家庭内暴力。そして、登場する人物はどこか異常な性癖を持っている。ツッコミどころ満載の展開は二転三転し、事件は非常に複雑怪奇で読んでる途中にげんなりするはずだ。

そして、ラストーー。
どんでん返しに次ぐどんでん返しだったから、最後のシーンではすっかり免疫ができてしまいそれほど驚くことはなかった。というか、その時点では、ん?これはどゆこと?と理解できない点があり、半ばモヤモヤした状態で読み終えてしまった。そして、考察サイトを見て本当の結末を知り、またもや驚愕した。自分はまったく違う捉え方をしていたのだ。

本作は好き嫌いの分かれる作品だと思う。そもそもミステリーとして、評価すべきなのかどうかも疑わしいところだ。本作の肝を成すギミックをアンフェアだと指摘する者もいるだろう。

けれど、そういった論争の枠組みから外に出て、一つの作品として向き合ったとき、本作は間違いなく名作だと断言できよう。

グロテスクやサイコパスな描写も度々あるので、決して万人に共感される小説ではないかもしれないが、作品に隠されている秘密やそれが暴かれていくカタストロフは、多くのミステリーの小説のそれを凌駕するものであると断言できる。

レビュー投稿日
2018年1月12日
読了日
2018年1月12日
本棚登録日
2018年1月12日
3
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