緑の家(上) (岩波文庫)

  • 岩波書店 (2010年8月20日発売)
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本棚登録 : 714
感想 : 63
5

技巧のための技巧に堕ちない。
内容を表すための技巧。

現在の描写に過去の断片が忍び込む文体や、
断章による時系列のシャッフルなどは、
決して今では目新しくないが、
初めての読者には「眩い」体験になっただろう。

個人的には「場所の不思議」に思うところあり。
白人たちの近代的都会、中世の闇を思い出させる修道院、インディオの未開の村。
場所の孕む「時間や歴史それ自体」が、隣り合って混在しているのだ。
登場人物たちは行き来したり留まったり。
ただただのほほんとしていられない、土地と歴史と人為が作り上げてきた、権力による搾取構造が、これでもかというほど具体的に描かれている。

それだけでなく、固太りした男のマチズモ(ロマンチックな意味において)と、包みつつ振り回される女の強かさを浮き彫りにした、人類普遍の筋でもあることに、いわゆる完璧な小説という称号が見えてくる。

バルガス=リョサ。
描く対象自体は徹頭徹尾リアルなのに、その過剰さ豊饒さや語り口が、索漠とした日本で読むとマジカルに感じられる。
そして作品内部において、混沌の密林→都市化が進行する。
これはまるで中上だ。いや中上がまるで南米だ。はは。あったりまえのことを今更。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 文学 海外 /南米
感想投稿日 : 2016年6月24日
読了日 : 2016年6月23日
本棚登録日 : 2015年12月23日

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