お耽美かと思いきや、コミカルでスラップスティックな味わい。
かと思いきや、所々まぶされていた暗い情念が、終盤にぶわっと明らかになって、ぞっ。
思わず二度目を読んで、構成の巧みさにびっくり。
翠と昭平という主旋律の奥に、瑠璃という副旋律の毒がぎらりと光る。
いろいろ連想できたのも面白い。
マンションからオペラグラスという構図は『裏窓』。だがあちらとこちら互いの誤解という捻りが効く。
殺人者の精神が乱れていく『黒猫』。あるいはホフマン『砂男』。
ごーん、ごーん、という工事現場の神経をささくれ立たせる音響は丸尾末広『電気蟻』を思い出したりして。
ある書き物ではキューブリック『シャイニング』。
老婆の取り乱しと憔悴の雰囲気は『何がジェーンに起ったか?』。
佳品。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
文学 日本 小説 最近 /女性
- 感想投稿日 : 2019年5月29日
- 読了日 : 2019年5月29日
- 本棚登録日 : 2017年11月21日
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