冬の旅人 下 (講談社文庫 み 11-12)

著者 :
  • 講談社 (2005年4月1日発売)
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感想 : 6
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皆川博子の醍醐味といえば、幻想、なのだけれど、大河浪漫では生活も描かなければならない。
ましてや露西亜の貧困を描くのであれば、なおさら。
いちどきの幻想ではなく、長いスパンの物語なのだから。

しかし要所要所で現れる幻想・幻覚。
特にタマーラが恋う少年や得体の知れない力などが、やはりねっとりと。

ロマノフ王朝の没落。ラスプーチン。歴史とクロスする。
一方フィクションに属する妹や相棒やが少しずつ離れていくのが、寂しくもある。

それにしても徳川家茂に対する勝海舟の優しさも想い合わせ、どうして没落する家の子供をいつくしむ視点、がこんなに胸に迫るのだろう。

読み終えて初めて、ミハイル・ヴルーベリ 座せる悪魔 を見た。荒々しさと粗野と憂愁と。ロシア人そのものじゃないか。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 別格3(春樹 龍 皆川博子 赤江瀑 らも 津原)
感想投稿日 : 2013年12月23日
読了日 : 2013年12月23日
本棚登録日 : 2012年10月14日

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