平和構築に関する各種の書物は近年急速に増えているが、そこには以下のような傾向に見て取れるように思われる。
一つは、平和構築に直接・間接に関わった実務家による経験論、あるいは彼らによる政策論としての書物である。
もう一つは、上記のような側面を持ちながらも、どちらかと言えば学術的な要素が強く、どのような形で戦後平和構築に取組む事が国家再建や平和安定に繋がるのかという政治・経済学的アプローチに基づく研究書である。こちらの場合は、確かに経済学における開発論からのアプローチが主流ではあるが、他方で政治学の制度論や民主化論、または行政論(あるいはガバナンス)等という問題からも広くアプローチされている。
こうした上記二つの側面を併せ持った書物も最近では多く、実務と研究の橋渡しも積極的に行われている。本書はまさしくそうした本であると言えよう。著者は、元NHKのディレクターでありながらも退職後、学術界に足を踏み入れ、平和構築の理論的・概念的側面について理解を深めながら、アフガンや東ティムールでインタヴュー等を行い、事例研究に取組んでいる。
これらの国々で生じている課題を見つめ、政策的に如何にこれを改善する事が出来るのだろうかという命題に取組んでいる書物ではあるが、平和構築に広く関心を持っている一般人、学部生、修士生等には興味深い内容のようにも思う。
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カテゴリ:
平和構築
- 感想投稿日 : 2010年10月10日
- 本棚登録日 : 2009年9月15日
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