ロシア闇の戦争: プーチンと秘密警察の恐るべきテロ工作を暴く

  • 光文社 (2007年6月1日発売)
3.55
  • (1)
  • (4)
  • (6)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 53
感想 : 6
4

 FSBの犯罪について暗殺されたリトビネンコとその友人が書いた著作。内容としてはリャザンに置けるアパート爆破事件のFSBの自作自演事件に着目しているが、それのみならず、FSBの犯罪行為を取り上げている。私が読んだ印象としては、ソ連時代、確かにFSBは非常に抑圧的な暴力機構としての役割を果たしたが、その一方ソ連共産党書記長、あるいは政治局に対する絶対的な忠誠が求められていた。しかし、ソ連の崩壊によって忠誠を誓う存在が消え、求める命令は内部組織の上司やそこでの規律になった。このことがFSBの犯罪とその後の政治参加、そして支配に繋がるように思う。組織や集団にはそれぞれに役割がある。特にソ連のように、暴力機構としてのKGBが共産党を支え、軍を抑えつけ、そして大衆を監視していたのであれば、その垂直統合型の命令系統の上部から共産党体制が消えた時に、自己判断と暴走行為が生じるのは当然の帰結と言える。しかし、混乱期に仮にエリツィンがFSBの解体やそれを抑える事に成功していれば、状況は変わったかもしれない。いや、プーチンの搭乗後にFSBの権力が回復するよう組織改革が行われた事実はこれを否定するか・・・。
 いずれにしてもFSBが完全な犯罪集団と化した時、大統領もFSB出身である今、誰が彼らを制御するのか・・・。

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: ロシア
感想投稿日 : 2007年8月4日
本棚登録日 : 2007年8月4日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする