横しぐれ (講談社文芸文庫)

  • 講談社 (1989年12月26日発売)
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感想 : 15
3

▼それこそ十代からの長い歳月で、丸谷才一さんの「一般向けの小説本」は多分あらかた読んでしまいました。相手がお亡くなりになっているから、そりゃいつかそういうことになります。
 恐らくこの本が最後の一冊だったのでは・・・・そういう感慨がありました(笑)。


▼収録は以下

・横しぐれ
・だらだら坂
・中年
・初旅

▼「横しぐれ」
執筆当時の現代劇で、私小説風、ですね。
国文学者の中年男が主人公で、
<自分の父が戦前に道後で飲みかわした坊主というのは、山頭火ではなかろうか>
というミステリーに挑みます。
これはもう、語り口で載せていく不思議な日常ミステリー。
圧巻の筆力です。ただまあ、好みによっては面白くないでしょうが。
北村薫さんや米澤穂信さんに繋がる水脈はここにあるんぢゃないかと思いました。

▼「だらだら坂」
執筆当時の現代劇かと。
サラリーマンの初老の男性が回想する。
戦後直後の時代に、普通に堅気の学生が、ひょんなことから道元坂あたりで不良にからまれた。
で、相手をぶちのめした。
相手は死んだかもしれない。確かめていないけれど。

・・・・というだけの話をこれまた面白く読ませます。
ぎらっとした暴力の匂いがします。

▼「中年」
新聞記者、それも映画エンタメ系の記者。中年の男性。
この主人公が、若手俳優の恋愛結婚相談に乗ったりしている。
そんな一見コミカルな日常の中の、欺瞞や、ミソジニーや、嘘みたいなものを読ませます。

▼「初旅」
これはあまり印象に残らなかった・・・・
たしか何か不条理系の・・・
タイムスリップか何かの現象に、盛岡に人探しに来た少年の話がからんで・・・
そして何か曖昧に終わったような。。。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 電子書籍
感想投稿日 : 2025年4月8日
読了日 : 2025年3月16日
本棚登録日 : 2025年3月16日

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