ちはやふる plus きみがため(1) (BE LOVE KC)

  • 講談社 (2024年4月12日発売)
本で見る
4.22
  • (20)
  • (15)
  • (10)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 308
感想 : 15
5

▼2025年春現在既刊の、1~3巻をまとめた感想です。

▼全50巻を数える大河青春かるたマンガ「ちはやふる」の続編です。「ちはやふる」を、当時9歳だった子供が大変に夢中になったので、付き合ってこちらも完読して、結果として大変に大人も楽しめた名作漫画だったと思いました。その続編。10歳になった子供も即魅入られて、親も付き合って読みました。

▼続編と言っても趣向があって、「ドカベン」とは違い、主人公は変ります。「ちはやふる」と同じ高校の同じかるた部が舞台で、「ちはやふる」のメイン登場人物たちが卒業したあとの時制。新1年生たちが主人公で、「ちはやふる」の登場人物たちは「伝説の創部メンバーたち、卒業生たち」という位置づけ。

▼「ちはやふる」と同じく、競技かるたに青春を賭ける高校生たちの話なんですが、味わいは微妙に違います。「ちはやふる」は直球なかるたマンガ(他に例は無いでしょうが)として出発して、長寿連載になったが故に、周囲の大人たちの人生模様も徐々に取り込んで描かれていました。ただ、基本は、「何かに熱中できる素晴らしさ」と「恋愛物語」がマンガらしい素敵なフィクションドラマで描かれたものだったと思います。

▼「きみがため」は、はじめからもうちょっと視座が広い感じです。「ちはやふる」の、「何かに熱中できる素晴らしさ」と「恋愛物語」は引き継ぎつつ、初めから「若者なりのエゴ」と、それに対立する「愛するたれかのための自己犠牲や献身」という葛藤軸が作られています。

▼主人公のひとりと思しき男子高校生は、かるたに熱中して、かるたの腕は積み上げたものがあるけれど、母が急逝して父と妹と三人暮らし。多忙なサラリーマン(官僚?)である父の余波で、「小1の妹のために自己犠牲」を強いられる。ところがそんなことをしていては「かるたで勝つ」という青春の目標が達成できない。でもぢゃあ、母の無い小1の子供を放置するのか?・・・・。

▼かてて加えて、

・高校生と言ってもまだまだ保護者の下にいるのであり、大人の理解と愛情が必要である。

という<ジュブナイルな生き物を社会がどう見守っていけるのか?>という、効率自己責任社会では尽きせぬ主題も散りばめられていて、さらには

・男女のジェンダー格差、お互いがありのままで尊重されるべきフェミニズム的世界観

みたいなものも「ちはやふる」より明確に輪郭があります。

▼そんなことに感心するのですが、、、、もちろんそれらは「エンタメとして面白いから」のオマケみたいなものでして。物語の進行の折々に、「脇役」として「ちはやふる50冊」を彩った人物たち(もちろん主役も)投入してくるぜいたくさに、「ちはやふる」愛読者としては、単純にしびれます。

▼「ちはやふる」が前提としてあった上で、「ちはやふる」より面白いのでは?という感触。子供のように、子供と共に、続巻が世に出るのをココロマチにしようと思います。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 漫画:お楽しみ
感想投稿日 : 2025年3月9日
読了日 : 2025年3月3日
本棚登録日 : 2025年3月3日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする