アオイホノオ 1 (ヤングサンデーコミックス)

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本棚登録 : 1480
レビュー : 127
著者 :
koba-book2011さん 漫画:お楽しみ   読み終わった 

島本和彦さんの、自伝的?漫画です。島本版「まんが道」。
島本和彦さんと言えば、何と言っても「逆境ナイン」と「燃えよペン」。
この二つを読んだことのない人は、老若男女問わず、勿体ない(漫画好き、の人ならば、ですが)。読んでください。面白いです。爆笑です。感動です。
その二つ読んだことないと、「アオイホノオ」読んでもねえ…と、すら思ってしまいます(笑)。

で、この「アオイホノオ」。今回、1巻から6巻まで読みました。
「燃えよペン」「吼えろペン」でもおなじみの?島本和彦さんをほうふつとさせる漫画家・焔燃(ホノオ・モユル)の、若き日、デビュー前の青春物語。
主人公は、1980年代初頭に、大阪芸術大学に所属して、漫画家あるいはアニメ作家を目指して、でも目指しているだけで割と無為に日々を送っているんですね。

この、時代。
携帯電話もなくて。DVDもなくて。インターネットもメールもパソコンもなくて。
お金もクルマも冷房もなくて。部屋には風呂すら付いてない。むさ苦しい男子大学生。
でも、特段ほんとに貧しい訳でもなくて。そこそこノホホンと恵まれていて。
可能性と、自信のない妄想だけが暴走し。野望と理想と恋愛欲と性欲と。見栄と社交と落伍する恐怖に苛まれ。
ミットモナサ満載。疾風怒濤、ひたすらまっしぐらに停滞する青春の物語。
いやあ、もう、お恥ずかしいですが、単純に昔の自分(とその周り)を思い出してしまって、笑って読んでしまいました。
細部は全然違いますけれど。

僕は1991~1996の期間に、東京は多摩地方の大学にいまして。自主映画やっていました。まだビデオでもないアマチュアのフィルム映画を作っていました。
そういう、「学生映画の世界」っていう業界?では、圧倒的に、知名度と実績が、ゼロという。吹けば飛ぶような少人数。男ばかりの事実上3~4人所帯。ほそぼそ、やってたんですね。
いやもう、ほんとに。大教室で上映会やっても、我ながら何一つ面白くない。技術レベルすら正視に堪えないアマチュア映画。映写機回して観客はゼロという。そんな素敵な青春でした(笑)。

この漫画は、恐らく1980~1983くらいが舞台です。色々ズレはあります。
舞台はいちおう、芸術大学だし。周りの仲間ライバルたちも、ちゃんと業界に食い込んでいく大物になるような人々がいます。だから、80年代版「トキワ荘」でもある訳です。
何より、主人公だって技術も自覚もあってプロを狙っている。ま、だって、島本和彦さんにせよホノオモユルさんにせよ、ちゃんと立派な一流のプロになってますからね。
でもやっぱり、「携帯もメールもネットもDVDもTSUTAYAもユニクロもスタバもなくて、飲み水はお金出して買うものではなかった時代」が、島本節に歌われて。
若さという、おバカな情熱とともに、手触りが甦ってきますね。
まあ、個人的にはこの漫画みたいに、なんだか良くわからないけど美人な女の子が身辺をウロウロしていたり、などということは、全く無かったですが。残念ながら(笑)。

正直、あまりにも個人的に懐かしすぎて、客観的に評価不能(笑)。でも、やっぱり漫画らしくバカバカしく、細部が具体的で、空回りする情熱のミットモナサが愛おしい。うん、面白い漫画、素敵な漫画なんですね。
やっぱり、書き手が愛着ある訳だから、「三丁目の夕日」的なロマンチックなノスタルジイ、感傷過多な懐かしさ、は、あるんですけど。
でも、そんなものは僕らの世代だけのことで。
きっと、これは2010年代の若者でも通底するハズカシサや物悲しさがあるんでしょうね。

そして、この漫画と、「ハチミツとクローバー」を比較すると面白い気がしますね。
どちらも、造形デザイン系の大学生の青春物語(笑)。

かたや。
「汗と埃とミットモナサの男汁。止めてくれるなオッカサン。濃いさと熱さの空回り。男ドアホウ島本節、笑って笑って、馬鹿馬鹿しさに涙する、最後はやっぱり少年漫画」
であり。かたや。
「全ては優しく、汗すら何だかレモン味。将来よりも今の想いが。すれ違い想いあう切なさが、静かに遠ざかるあの日々の後ろ姿に、胸キュン、クスクス、甘酸っぱい。最後はやっぱり少女漫画」
僕はどっちも、楽しめたんですけどね。どちらも漫画らしい素敵な漫画でした。
好みでしょうけど。そんな振れ幅が楽しめるのも、日本が世界に誇る、漫画という読物の快楽ですねえ。

レビュー投稿日
2014年4月24日
読了日
2014年4月24日
本棚登録日
2014年4月24日
5
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