用心棒日月抄 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1981年3月27日発売)
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感想 : 172
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1978年初版の、藤沢周平さんの大人気時代小説。
恐らく中学生くらいの頃に読んだのですが、30年ぶり?くらいの再読。
某藩藩士の青江又八郎さんが主人公。

藩内の陰謀(藩主の毒殺とか)を知ってしまって、首魁(藩の家老)に殺されかかって、反撃して殺してしまいました。
そして面倒なことに殺した相手は、自分の許嫁の父。
その上、チャンバラして相手を殺す瞬間を、愛しい許嫁に目撃されてしまった。

取るものも取りあえず、殺されてはあかんので、脱走、脱藩して江戸に出てきました。
陰謀にまみれた地元に戻れる道はなさそうで、こうなったらいずれ、「愛しい許嫁が敵討ちに現れるだろうから、そうしたら、殺されてあげよう」という、
良く考えたらよく分からないモチベーションで裏長屋暮らし。
そして、日々の食べていく金銭のために、口入屋に通っては出来る仕事を貰ってきます。
そして、仕事のいちばんは、「用心棒」稼業。なぜなら、又八郎さんは剣術の腕が立つからです…。



という設定の中で、一話完結でいろいろな用心棒稼業の顛末が描かれます。連続ドラマ向きですね。
(何度か連ドラ化されています。一番有名なのは、NHKで放送された村上弘明さん版でしょう)

それぞれのエピソードとしては、

●犬の用心棒…犬の元の飼い主が、女への慕情から犬を襲おうとした。
(「生類憐みの令」がベースにあります)

●娘の用心棒…以前に惚れていた悪い男が襲ってくる。

などなどがありますが、
始めから最後まで、もう一つの貫く流れとして「忠臣蔵」があります。
つまり、浅野と吉良の刃傷事件から、打ち入りまで。
その折々で、又八郎さんは浅野家浪人たちの江戸での蠢動に遭遇してしまいます。
そして、依頼される用心棒案件も、浅野、吉良の絡みの案件が増えてくる。

最後には無事に討ち入り。
その直前までは吉良家の用心棒をしていたけれど、無事に直前に(意図的に)解雇されます。

そして最終話では、地元の政治状況が変わって、
無事に地元に戻って許嫁とも結ばれてめでたし、となります。

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改めて読むと、割と淡々とした筆致で全体が貫かれて、ご都合な展開も大人の楽しみ方で読んでいけました。
白眉だったなあと思ったのは、「夜鷹の用心棒」篇。
要約すると、吉良の軍団が、陰謀を聴かれてしまっただけの理由で、夜鷹を殺そうと付け狙う。
どうして狙われているのかよくワカラナイまま、夜鷹は又八郎を用心棒に雇う。
結果的に、又八郎は夜鷹を守りきれずに、殺されてしまう…そして真相を探って復讐を…。という一篇。
夜鷹と又八郎の交流や、「守りきれなかった」と言う悔恨や敗北感、そういう湿った感じが、すごくぞくっとするほど上手く描けていました。
こういうところ、作家の持ち味というものなのでしょう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 電子書籍
感想投稿日 : 2017年11月24日
読了日 : 2017年11月23日
本棚登録日 : 2017年11月23日

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