▼15巻も特別長編でしたが、そちらは正直に言ってイマイチでした。17巻の「鬼火」は面白かったです。普通に長編ミステリとして組み立てができていますね。
▼要は2/3くらいまでは、全貌が鬼平にも読者にも分からない。3/4までと言って良いかな…。その「分からなさ」を愉しみます。そのネタ自体は短編でも済むような話ですが、語り口がレギュラーを上手く使って広がりがあって、謎の展開も段取りが深い、という印象です。
以下、ネタバレあります
▼鍵を握るのは、「権兵衛酒屋」という居酒屋の不愛想な老人夫婦。これが要は、
「落剝したかつての御家人」で、
「落剝した理由はお家騒動で、決して根っからの悪人ではなく」
「でも浮世の流れで、きちんとした?盗賊まで身を落として」
「今は引退しているが一族の対面のために素性は明かしていない」
「そこに、性の悪い盗賊たちの手が伸びる」
という仕掛けでいわゆる「人生の哀歓」ってやつが濃厚です。
そのあたりは池波さんが敬愛しているはずのメグレ警視シリーズを彷彿とさせます。
▼その「性の悪い盗賊」を退治して終わりになるんですが、その悪者たちが毎度おなじみの「不良旗本」や「不良奥医師」などの浮世の権威と持ちつ持たれつだったりして、なかなか一筋縄に組織の全貌と動機が分からない、という仕組みでした。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2025年2月16日
- 読了日 : 2025年2月9日
- 本棚登録日 : 2025年2月9日
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