東西不思議物語 (河出文庫 121A)

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著者 :
koba-book2011さん 電子書籍   読み終わった 

長年、読んでみたいなあ、と思っていた人の本を、初めて読むのは愉しいものです。
それで、期待に違わず楽しめると、なおのこと。
だんだん歳を取ってくると、「あんまり悠長に先送りにしていられないなあ」と、思うので。
恥ずかしながら読んだことありません、という系統の作家さん、読んでいきたいなあ、と。

どうやら、1976年に新聞に連載された文章のようです。
澁澤龍彦さん、当時48歳くらいのようですね。

それなりに裕福な家庭に生まれ、エリートで、兵隊に行く前に戦争が終わり、東大仏文を経て新聞などへの就職は失敗。
大学院に進んで肺病を病み。就職をあきらめて、翻訳・評論等の文筆業に。
サドの翻訳紹介、ダークサイドな人間性やらセックスの研究や紹介、かと思えば博覧強記な教養を素に、硬派な評論エッセイ、そして晩年は小説まで。
三島由紀夫さんとの交流や、サドやら悪徳の栄え裁判やらで、なんとなくドロドロした印象がありますが、チョット変態さんだったのかもですけど、すごいインテリにして文章家だった。。。

と、まあ。
昔から、本屋さんで、澁澤さんの本は、背表紙とか解説とか、いっぱい見ていたので。上記のようなことは知っていたんですが。
なかなか、なんとなく読む機会が無くて、実は今回が、初・澁澤龍彦さんでした。

もうとにかく、お化けやら妖怪やら超能力やら、そういうことを、楽しそうに紹介するエッセイです。
一つ一つ、そんなに執拗に書き込むわけじゃなくて。
「ポルターガイスト現象っていうと、西洋だとこういう例がありますね。ところで日本だと、こういう書物にこういう記述があって、同じような現象なんですね」
と、いうくらいの感じの短文。それが、49個並んでいる。
割と気軽にすらすらっと楽しめます。

●肉体から魂が出て、また戻る、みたいな現象
●頭が二つある蛇
●鏡の不思議な世界
●人形が人格を帯びるみたいなこと
●屁で音楽を奏でる芸人
●ウブメという妖怪?産む女なのか、鳥なのか
●戦国時代の幻術士・果心居士
●天狗の話
●人造人間の話
●不死の人
●黒ミサ

などなど、と言った物事を、単純に解説したり。
あと、「×世紀の×国ではね、こういう書物にこういうことが書いてあって」
と、いうような、「へ~」っと言うオモシロ話が満載。
それが、タイトル通り、古代から現代までの、日本、中国、朝鮮、欧州、アメリカ、などなどの事例が実に博覧強記。
一方で、「だからなんなのさ」というと、それ以上でも以下でもありません。
ある意味気楽な趣味の本です。
僕は、特段に不可思議現象のマニアではないんですが、最近、水木しげるさんを読んだりしていて、「そういうのも面白いよなあ」と、とっても浅いレベルでの好奇心がちょこっとあったので。
(割とこれまで、基本はリアリズムの理性主義な読書が多かったので。ちょっとこういうのも、面白いですね)

一方で、澁澤龍彦さんの文章っていうのは、なるほど、実にさりげなく上品にして簡潔。日本語使いとしての深い実力は、かいま見れた気がします。
なるほど、小説家っていう訳じゃない文章なんだなあ、と思いました。
何ていったらいいか、自己主張というか、目立とう精神という、書き手の自身のタレント意識性みたいなものが、薄いなあ、っていうか。
小説家さんの小説じゃない文章って、やっぱりそういうものが感じると思うんですけど。

と言って、新聞ジャーナリズム的な文章とも違うんですけど。
やっぱり、平易透明な評論的な文章っていいいますか。
そういう、文章レベルでは奇をてらわない上に、とにかく別段、衒学的じゃなくて、楽しそうに淡々と、アヤシイ雑学を棚から出して、見せてくれます。
そういった、肩の力の抜け具合。これはなかなか、大人の芸ですね。

なんというか。大正昭和モダン建築な喫茶店で、実に美味しいコーヒーをブラックでいただいて。添えてある小さなビスケットも、何だか上質でした、みたいな。
それで、主食になる訳でもないんですけどね。
気負わぬ軽さが漂う、そんなホッとする感じ。

これはこれで読書の快楽、澁澤龍彦さん、今後も楽しめそうです。

レビュー投稿日
2014年8月18日
読了日
2014年8月18日
本棚登録日
2014年8月18日
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