新宿鮫 新装版: 新宿鮫1 (光文社文庫 お 21-16 新宿鮫 新装版 1)

著者 :
  • 光文社 (2014年2月13日発売)
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感想 : 87
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とにかく何にも考えずに、「面白いオモシロイ」と、するする読める、のめり込める小説を読みたいなあ。
と、いう衝動に駆られるときがあります。
若干、安易だったり、歩留まりが見えすぎていたり、恥ずかしいトコロもあったり、再読だったり、そういうのでも、いいや!という。

ちょっと歯ごたえのある本。
ちょっと新しい発見がある本。
自分の想像力とか、関心を広げてくれる本。
そういう本を読みたい時もあるんですけれど。

と、言う訳で、恐らく7年ぶり?か、そこらの再読。「新宿鮫」シリーズの第1作。

改めて読むと、やっぱり読みやすくて面白い。それでもって、なかなか部分的に恥ずかしい(笑)。

新宿署の一匹狼の警部、鮫島さん。
一匹狼、ってところでもう充分恥ずかしいのですが(笑)、そこの構造は、
「キャリア支配の警察組織に、反逆したキャリアである」
「警察組織がひっくり返るくらいの巨大な不祥事の秘密を握っている」
という仕掛けで、なんとなく読み進められます。ここのところ、ウマイなあ。
(もちろん、警察の本当のリアルとの齟齬については、分かりませんが)

それでもって、けっこう恥ずかしいのが、
「インディーズロックの女性歌手が恋人であり、主人公の警部は作詞のアドバイスもする」
というあたりですかね(笑)。
この線は、なかなかに男性読者の安易なヨロコビツボを突いている感じで、逆に恥ずかしい(笑)。

そこの恥ずかしさを補填する感じなのが、犯罪者の側のダークサイドを「擬似一人称」的に描く、ハードな部分なんでしょう。
基本、三人称で主人公の鮫島さん越しに描写が進むのですが、章を変えて、犯人側の意識を三人称で描く。
その章は、小説の特徴を生かして、「心理を描くけど、全体像を見せない」という仕掛け。
この仕掛けは、確かシリーズを通した特徴のはずです。

それから、新宿歌舞伎町を中心に、東京周辺の地理を丁寧に舐めるように描く語り口も、恥ずかしさを補填して読ませてくれます(笑)。

第1作は、

●男色家の密造銃器製造者・木津を追い詰める鮫島。反撃に出る木津との攻防戦。

●木津の作った銃で、新宿を舞台に連続警察官殺人事件が起こる。その顛末。

●警察内の、悪役=香田、主人公の味方=鑑識の藪、上司の桃井。

●警察オタクの異常心理的な男の内面と、彼が連続殺人事件に絡んでいく経緯

というパラレルで描かれます。

なんといっても、主人公の「はぐれエリート刑事」という立ち位置が、娯楽的に絶妙。それに絡む脇役が、悪役含めて粒だっていて、面白いですね。
ただ無論、全般的に「男のロマン」的なご都合と、独特の臭さ(笑)。これもすごいです。
(大沢さんの他の本もちょっと読んだのですが、その「ご都合」と「臭さ」が凄すぎて、今のところ、新宿鮫シリーズ以外、のめりこめず…)

恥ずかしいけど「男のロマン」臭がこぼれあふれる娯楽も、たまには良いよねー…という向きには、読まないのは勿体無い傑作ではあります。

(1作読んでしまったら、恐らく全作を今年中に再読してしまいそうな気配…。
なんだかんだ、好きなんですよね…「ゴルゴ13」だって、好きですし…)

※ちなみに、何度か映像化されていまして。
正直、これはかなり小説らしい小説なので、原作を読む楽しみには適わないと思うんですが、
好みで言うと、映画版の真田広之さん=鮫島、奥田瑛二さん=木津、というのは、配役的には好きでした。
もうけっこう、昔の映画ですけれど。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 電子書籍
感想投稿日 : 2016年6月22日
読了日 : 2016年6月22日
本棚登録日 : 2016年6月22日

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