訳者後書きにあるように、薄い小冊子ながら知識の細切れというよりは著者のユーモアも交えながら天文学の歴史を感じることができた。

一貫して著者の念頭にあったのは
「地球でのふつうは宇宙でのふつうではない」
という言葉に集約できるだろう。

ただ、最終章には著者の想いが強く出てしまったのだろう。読んでいて非常に違和感を感じてしまった。
本書のタイトルが著者の想いであることから主旨としては良いのだが、これまでの宇宙スケールの話が極端に一個人のスケールにまで収束してしまい(書いてある内容は宇宙視点の話なのが皮肉である)、言い方は悪いが著者がアメリカ人気質が全面に出てしまった感が否めず、残念であった。

2021年1月27日

読書状況 読み終わった [2021年1月27日]
カテゴリ 科学・技術

若くはないのだが、気になったので読んでみた。
40の項目に分かれており、大きくは時代の流れに沿って書かれているため読みやすい。

登場人物が多いのと内容が多岐に渡るので個別の項目の詳細は何度か読み返す必要があるが、概観として科学史を掴むのには良書だなと思う。

それにしても、宗教というのは良くも悪くも人間の歴史に影響を与えるのだなとつくづく思う。


2021年1月17日

読書状況 読み終わった [2021年1月17日]
カテゴリ 科学・技術

タイトルにある「プルースト」と「イカ」に何ら連想できるものがなく、逆に興味を持って購入。
いわゆるジャケ買いであり、書棚にしばらく眠らせておいた。

内容的には丁寧な目次と解説、最終章を読めば概観できる。

ソクラテスが懸念した書記への警鐘と、本書が執筆されてからさらに加速度的に世界中に蔓延しているSNSへに対する著者の警鐘に本質的な違いはないだろう。

趣旨は違うが、枕草子や小野小町の感情表現が、現代でもほぼ変わらず共感できるように、それぞれの時代で懸念される対象は常に変化はすれども、その内面的な部分にはある一定の普遍性があるように思える。

本書流に言えば普遍性というより不変性かもしれない。


正直、「イカ」
にジャケ買いした側面に関しては、若干釣られたなという感じもしないではないが、不快なものはない。
むしろ、
「ああ、このプルーストとイカを隔ているものに何か共通項があるのかもしれない、という部分に興味を持つことこそ、著者の言う読字が脳にもたらす影響の現れなんだな」
と思い、ひとりごちた。

科学的専門的な部分に興味がない人はそう言った部分を読み飛ばしても一向に問題ない構成にはなっているので、強いて言えばこれから子育てをする人たちに読んでもらうと良いと思う。

それにしても、
遅延ニューロン
って、面白い。

2021年1月2日

読書状況 読み終わった [2021年1月2日]
カテゴリ 科学・技術

昔読んだ漫画で、勝が「薩長同盟に大政奉還に、ありゃあ全部龍馬がやったことさ」というようなフレーズがあったと記憶している。

もちろん歴史というものは未来から見て書かれるものだし、視点によっても様々だと思うから一概には言えないが、本書で著者が記す小松帯刀という人物には、幕末から維新にかけての縁の下の力持ちという姿が感じられて非常に興味深い。

人としてとても魅力を感じる。

2020年12月30日

読書状況 読み終わった [2020年12月30日]
カテゴリ 歴史・文化系

ハードカバーで2cmほどの厚みだが、9ポイントぐらいの大きな文字にマージンもたっぷりという構成なのでさらりと読める。

また、やや本末転倒だが、各章ごとの要約文が目次に記されているため、そこを読むだけでも本書で伝えたい内容はわかる。本文はその肉付けのようなものとも言える。

少々辛口になってしまった。
辛口ついでに言ってしまうと、いわゆる文学作品と比べて、著者の使うレトリックや感情表現が少し目障りでもあった。そのような表現を入れずとも内容としては良い研究だと思うので。

2020年12月28日

読書状況 読み終わった [2020年12月28日]
カテゴリ 歴史・文化系

余談ではあるが、最近1860年前後に興味がある。
小松帯刀に興味を持ち始めたのがその発端である。

これについて書き始めると本書の感想から外れてしまうのでやめておくが、その中で文久2年(1862年)あたりに特に興味を持ち始めていたところで、新戸部がまさにその年に生まれたのだというところでさらに興味を増した。歴史というのはこの連鎖がたまらない。
閑話休題。

現代語訳者の山本氏が言うように、明治人である新渡戸の思想には確かに現代に馴染まない部分もあるのかもしれない。
ただ、自分としてはほぼほぼ共感以外の何物もなかったと言えるぐらい、すんなりと入ってきた。

歴史をどの時点で輪切りにしたとしても、必ずそこにはその前後での「差異」が存在していると思う。
差異の中身(本書で言えば武士道とデモクラシー)には時代性はあるとしても、差異そのものに対する感じ方には時代性はないのだと思える。

それが新渡戸が言う、生き続ける魂なのかもしれないが。

2020年12月27日

読書状況 読み終わった [2020年12月27日]
カテゴリ 哲学・思想

8ポ二段。

ポニってなんだ?全く想像がつかない言葉だが、調べてみるとなんということはない、
「8ポイントの文字で2段組の本の構成」
のことであった。

ポニではなく、ポ(イント)の二(2)段。

上記は本書にとっては特に深い意味はなく、著者の本作における気持ちを表現した修飾語に過ぎないが、知識不足の読者にはそれだけでも、ひとつの知識が広がる経験をさせてもらった。

そんな程度だから、著者の2年にわたるこの放浪記はなんとも壮大であった。
でも、僭越ながら崇高なものではなく、ものすごく身近な感じでもあった。

子供の頃の探検ごっこの感覚に似ている。

とはいえ、ひけらかすわけではなくごく普通に漏れ出す著者の知識や見聞の広さに、その探検ごっこにひとかたならぬ壮大さを感じてしまう。

それと同時に、アメリカを語る著者とインドを語る著者の心の揺らぎの大きさが、全てを理解しきれない読者に対してもその凄まじさだけはひしひしと伝わる。

1960年代の世界をもう一度学び直して、再読したい。

2020年12月14日

読書状況 読み終わった [2020年12月11日]
カテゴリ 歴史・文化系

明治10年の著書だから、およそ130年ほど前か。
当時のイギリス人から見た日本人の姿、そしてアイヌ人の姿が生々しく見えて興味深かった。

特段目を引くのは、形容詞である。
最初は、その対象のビジュアルを表現する形容詞と、形容された対象に対して著者が抱く感情を表現する形容詞のギャップから、訳者の直訳によるものなのかと勘ぐるほどだったが、読み進めるうちにこの感覚こそがイギリス的なのかもしれない、と思った。

また、アイヌ人を表現する「音楽的な声」という表現がとても印象に残った。
アイヌ語がわからないが故にそう感じたのかもしれないが、著者の細やかな観察眼から推測するに決してそれだけではなく、本当に声の質やリズムも音楽的であったのだろうと思う。
果たしてどんな声で話していたのだろうか?

2020年11月28日

読書状況 読み終わった [2020年11月27日]
カテゴリ 歴史・文化系

深夜特急とのはじめての出会いは、学生の頃に借りてきた大沢たかお主演のビデオだった。
その後、文庫で一気に読んだ。
そんなことを、この20年の間に何度か繰り返していたが、先日たまたま書店で本書を見つけ購入。

深夜特急を読んでいた当時は著者がいつ頃旅をしていたのかということよりも、旅そのものに夢中になっていたが、それが1970年代のことだということを感じつつ読むことで、またこの20年の間に自分の経験したことが重なり合うことで、深夜特急をもう一度味わうことができた。

次は小田実を読んでみよう。

2020年11月7日

読書状況 読み終わった [2020年11月7日]
カテゴリ 伝記的なもの

一つ大きな勘違いをしていた。
著者についての知識が何らない状態で本書を手にしたが、読み始めてすぐに昭和の小説かと思った。
というのも、文体というか文章の雰囲気というか、それがとても素朴でどこか懐かしさを感じるものだったからだ。

そして、すぐにその世界に引き込まれ、短編ではあるものの一気に読み終えてしまった。

直前に読んだ残穢とは対照的であった。
そして、とても面白い、素敵な本であった。

本書には夜市ともう一編が収録されている。
夜市を読んだあとで、著者について調べてびっくりした。
まさかこんなに若い著者だったとは。

続く風の古道も、すぐに引き込まれて読了。

解説で林真理子が自分の感じた著者へのイメージを的確に表現しており、まさに溜飲を下げる思いであった。

ホラーという括りが、なにかちっぽけなどうでも良いものに思えるほど、静かな興奮を味わえられ素朴で味わいのある世界だった。

良い著者に出会えた。

2020年10月18日

読書状況 読み終わった [2020年10月17日]

ホラー小説はほとんど読まなかったが、夏のおすすめ怪談本の中にあり読んでみた。

とても読みやすくすぐに引き込まれて読み進めた。

面白かったし話もしっかりしていて良かったが、残念ながら「恐ろしさ」は感じなかった。

穢れは自分も信じる方だ。ただ、穢れは恐怖なのか?
ふと、松本清張の描く生きた人間の方がよほど怖いな、と思った。

死んだ人間よりも生きている人間の方がよほど怖いという思いが根底にあるからだろうか。

2020年10月15日

読書状況 読み終わった [2020年10月15日]

歴史を学び直して再読を要す。

読後、真先に頭に浮かんだのは上の文言だった。

正直に言って、本書に対して評価も感想もできるほどの見聞が自分にはまだない。

だが、何故かものすごく惹かれる。
ダンツィヒ、メーメル、カント、グラス、、、
聞き齧りの心許ない知識とアンバランスなほどに惹かれている。

まずは、ブリキの太鼓を読んでみよう。
そして、蟹の横歩きを読んでみよう。
そのあと、カントを読み直してから、再び本書を読んでみたい。

2020年12月14日

読書状況 読み終わった [2020年12月14日]
カテゴリ 歴史・文化系

書店で美術書の棚にあった。
衝動的に購入。
タイトルの通り、西洋の奇譚のダイジェスト。
面白かったかといえば面白かった。
一つ一つのテーマを決して深掘りしていないわけではないのだが、読後感はラノベやエッセイを読んだ感じ。

2020年10月12日

読書状況 読み終わった [2020年10月12日]
カテゴリ 歴史・文化系

寺田の漱石先生からの流れで読む。
寺田が書く漱石、そしてその寺田を書く中谷という知の流れを時間軸で辿るのも面白かったが、何よりその文学的、哲学的な科学という思想を垣間見ることができたのが非常に面白かった。

自分などは足元にも及ばないが、彼ら先達の「思想の方向」には非常に共感できる。

2020年9月4日

読書状況 読み終わった [2020年9月4日]
カテゴリ 哲学・思想

8月13日購入。
一昨日の会食相手と夏目漱石や寺田寅彦の話などしていたものだから、書店で一際目に付き購入してしまった。
漱石先生のことを書いているようで、その実、明治大正という時代が垣間見える。
そうか、随筆はこういう楽しさがあるのだなと改めて思う。

ちなみに中谷宇吉郎著作の『寺田寅彦』も一緒に購入してしまったのだが、漱石先生の巻末に件の宇吉郎先生も登場しており、いやはや読む前から聯想の坩堝に見事にはまっていたなと苦笑。

こういう読書も楽しい。

2020年8月16日

読書状況 読み終わった [2020年8月16日]
カテゴリ 伝記的なもの

このような冊子の存在に初めて気付く。
知の巨人という呼び方では無駄に格調が高すぎると感じるぐらい、息を吐くようにすらすらと高次元な対話がなされる。
まるで人がどうあがいても届くことのない青空を自由に飛び回る鳥のようだ。

同じ空を飛ぶには自分の足元があまりにも覚束ないが、遥か彼方の空模様を眺めているような読後感だった。

2020年8月14日

読書状況 読み終わった [2020年8月13日]
カテゴリ 哲学・思想

読書が好きだが、一冊の方を通して読む時間がなかなか取れない。
そんな中、久々に休むことなく一息で読了。
内容に一気に引き込まれたというのも大きいが、その時間を取れたことも含め、読書というよりも、まさに本書にある通り「自分自身の感情の確認作業」をしていたのだと思う。

分析的に読んでいるようで、実は小説のように読んでいたのかもしれない。

「両方」というフレーズがここ彼処に出てくるのも心地よかったのだろう。

取り止めもない感想ではあり、共感は得にくい文面となったが、読んで清々しい気持ちになれると思う。お勧めしたい本の一冊となった。

2020年8月1日

読書状況 読み終わった [2020年8月1日]
カテゴリ 哲学・思想

本書の内容とは直接関係ないが、40年近く前に書かれた、40年後の未来を描いたSF小説を読むことで、40年前と80年前にタイムトリップ出来たかのような不思議な楽しさを味わえる読後感であった。

無論、現実の1984年とは異なる世界が描かれてはいるのだが、著者が生きた大戦後の時代背景と、2020年現在におけるネット社会の現実を考えると、形の際はあれど本質としては実は的確に未来を予言しているのではないかと思える点が興味深かった。

特に、所謂「思考停止」状態を作り出す様は、現実に起こっているなあと、周りの所謂「そういう人たち」を見ているとつくづく思う。

2020年11月28日

読書状況 読み終わった [2020年11月14日]

奇しくも2020年4月7日にCOVID-19による緊急事態宣言がなされた現在と、カミュの描いたオラン市内で死んだ鼠を医師リウーが発見する(発刊された1947年ということで良いだろう)4月15日朝という設定に、冒頭から偶然の妙を感じながら読み始めた。

読中は翻訳の冗長さになかなか引き込まれることが出来なかった感も否めないが、それでもランベールの心情吐露の場面やオトン氏の息子が辿る非情な運命の場面など、グッと引き込まれる部分もあり、読後感は悪くなかった。

本書は『ペスト』というテーマを借りたカミュの生きた時代への提唱であり反抗なのだろう。解説でも『不条理』というテーマについて言及しており、本書の理解を助けてくれる。
刊行された当時は大戦からほんの2年後。爆発的に読まれたのも肯ける。

当然ながらCOVID-19による情景とは異なるが、それでも今後、オランの人々と同じように、現代社会でも「懐疑主義を植え付けられた人々」と「楽観思想の自然発生的な兆候」とで二分された世論が続くだろう。
そして、緊急事態宣言が解除された現在以降のこの夏から年明けまでの期間において、カミュの描いた人々の心理は、少なからず自分の思考の指標の一つになると思う。


主題とは異なるが、グランが何度も書き直している騎馬娘の文書について、「『の』が連続するのがリズムが悪い〜」と言っているシーンは、過剰なくらい言葉の用い方に反応してしまう自分にとって、とても共感してしまうシーンであった。

2020年6月8日

読書状況 読み終わった [2020年6月7日]

2016.10.10読了

2016年10月13日

読書状況 読み終わった [2016年10月13日]
カテゴリ 歴史・文化系

以前、野矢茂樹さんの、「はじめて考えるときのように」という本を読んで、そのものの名前を「とってしまう」という行為が、そのものの可能性を広げるという話にとても刺激を受けた時と同じくらい、みうらじゅんさんが実践している、名前を「つけてしまう」という行為が新たな可能性を創りだす、という話にものすごい刺激的な何かを感じた。

僕の仕事は大きくジャンル分けすればデザインの仕事だけど、それも仕事のネーミングによって、案外、仕事内容や受け取られ方の負荷も変わってきたりする。
だから、みうらさんの話みたいなことは、よく実感できたりする。実際に、デザインとはまったく関係ないものをつなげて、ないものを創り出すような側面もあるからだ。

ただ、自分の感覚が育つ前に、先に行為を重ねていくというスタンスは斬新だった。

みうらさんほどのセンスはないけど、ちょっと「野矢じゅんプレイ」と名付けて、少しネーミングという視点からデザインを掘り下げてみようかな、と思った。

いい本に出会えた。

2015年12月12日

読書状況 読み終わった [2015年12月12日]
カテゴリ 哲学・思想

絵画の描かれた年代は、科学的に分析することができる。
それをもって作者不詳の絵画の鑑定をする。
フェルメールのような偉大な画家の作品と同定できれば大発見、そうでなければただの17世紀の絵画ということになる。
では、その同定の根拠はなにか?
先に書いた年代の同定を除けば、あとは、鑑定人による主観である。
絵のタッチや、作風、作者の生涯などから、総合的に推測する。

それゆえ、当然ながら鑑定人によって、真作であったものが贋作になることもあり、その逆もある。

それゆえ、絵画そのものの美しさとか素晴らしさという価値基準は、真偽の陰に埋もれる。

ものづくりに携わる者として、なんだか色々考えさせられる本だった。

2015年9月22日

読書状況 読み終わった [2015年9月20日]
カテゴリ 伝記的なもの

知人に著者のことを教えてもらい読んでみた。
自分は医療者ではないけれども、この本に出会えてよかったと心底思った。

タイトルにある通り、主に中高生向けに書かれたものなので、とても分かりやすい文書になっているが、書かれている内容はとても深い。
そして、医療者に限らず、人生のどんな場面でも役に立つ内容だと思う。

支えられているから支えることができる。

私が相手をわかるのではなく、相手が私をわかってくれる人だと思うことにする。

役に立たなくても大切なものがある。


時間、関係、自律という3つの支えの柱の話から、改めて自分を見つめ直すいいきっかけになりました。

2015年5月24日

読書状況 読み終わった [2015年5月24日]
カテゴリ 哲学・思想

前情報無しで読んだが、とても面白かった。
20世紀初期の絵画にまつわるお話。

美術作品にはつねに付いて回る真贋問題に焦点を当てて物語は展開するのだが、元キュレーターという作者の知識量が、その文章表現を豊かなものにしていて、あっという間に絵画の世界に引き込まれた。

改めて、絵画鑑賞が無性にしたくなる読後感。

2015年5月17日

読書状況 読み終わった [2015年5月17日]
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