美しい小説を読んだ、というのが正直な感想だ。山際淳司の小説は、常に美しいので今更かもしれないが。シンプルなものには、美しさがある。山際淳司の小説は、いつもシンプルな構造をしている。謎解きも複雑な人間関係もなく、ただスポーツと携わる人間たちだけが、明解に描写されているのだ。
文字世界のフットボールは、切ない。30代になっても、アメフトを愛さずにはいられないプレイヤーたちの姿がある。日々の仕事に疲れ、人間関係に倦んでも。ヘルメットをかぶり、プロテクターをつけてフィールドに向かうとき、彼らの目は輝いている。退屈な過去も先の見えない未来も忘れて、ただ勝利を手にするために。
『タッチ、タッチ、ダウン』は『アイシールド21』の高校生たちの、あり得るかもしれない未来かもしれない。若さの盛りを過ぎても、フットボールから離れられない大人たちの姿。それは一抹の切なさと、目を放せない格好良さを併せ持っていた。
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- 感想投稿日 : 2006年2月11日
- 本棚登録日 : 2006年2月11日
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