昭和の終わり大阪河内の村を舞台に、因習にとらわれた一族の日々を、四歳の少女の視点から描く。
本家や分家、婿養子など一族内での独特なポジションに加え、精神疾患や政治的な思想などへの差別が根深くはびこる様が描かれているのだが、四歳児の主人公の感覚をとおしているため、不穏ではあるものの陰湿にならないところがいい。
ときおりビデオやパソコンという言葉が出てはくるものの、一族内でのあまりにも濃密な関係と古く閉鎖的な考え方に、設定された時代よりも以前の昭和初期から中期くらいの話に感じた。
新潮新人賞と三島由紀夫賞をダブル受賞したこの作品は、作者のデビュー作だというから驚く。今後の作品が楽しみだ。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
ま行
- 感想投稿日 : 2019年8月6日
- 読了日 : 2019年8月6日
- 本棚登録日 : 2019年8月5日
みんなの感想をみる