
舞台は、19世紀末から2度の世界大戦を経たドイツ。恵まれない環境下で自分の生き方を貫いた、オルガという名の1人の女性の生涯を追う。
第1部は身分違いの相手との恋と別離をオルガの立場から、第2部では晩年のオルガを看とる男性の目から、そして第3部では未開封のオルガの手紙から、彼女の姿を描いている。
ずいぶん前に読んだ『朗読者』の作者ということで手に取った一冊、翻訳のせいなのか原文もそうなのか、レポートのような淡々とした文章はやや味気なく、とくに第1部は取っつきにくい。
3部で明かされる真実は途中で予想できたけれど、強い信念をもって大きな秘密を抱えたまま恋人を待ち続け、やがて愛しさが、怒り、悲しみ、諦めに変わっていくさまは哀しかった。
それにしても、ひとところに留まれず、無謀なチャレンジを止められない冒険家というのは、どうも昔から好きになれない。男のロマンというよりも、ただのわがままにしか思えないから。
一途なオルガだが、もし念願叶って結婚していたら、果たしてずっと添い遂げられただろうか…。と、すこしひねた見方をしてしまった。
- レビュー投稿日
- 2020年9月3日
- 読了日
- 2020年9月3日
- 本棚登録日
- 2020年9月1日
『オルガ (新潮クレスト・ブックス)』のレビューへのコメント
コメントをする場合は、ログインしてください。