全国アホ・バカ分布考―はるかなる言葉の旅路 (新潮文庫)

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  • 新潮社 (1996年11月29日発売)
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感想 : 71
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バラエティ番組「探偵!ナイトスクープ」から発生した調査。番組は1度も見なかったが、当時、人から話は聞いていた。柳田國男の蝸牛考(方言周圏論)が登場するほか、古い文献を丁寧に分析しているのは圧巻で、半ばあたりの細かい分析は読み飛ばしたくなったほど。後半のバカやアホの語源を探っていくくだりは、ほとんど研究者のようで脱帽した。

国立国語研究所の「日本言語地図」によると、285語のうち76語(27%)が周圏分布を見せている。著者の調査でも30%足らずで、評価を与えるための表現は価値が下がりやすく、新しい表現が要求されたからではないかと考える。

バカの語源について、「鹿を指して馬と言う」の史記の故事説は、「バロク」と発音されなければならないという音韻上の無理がある。唐の白楽天の詩の中に「馬家の宅」が、大金を投じて造営した邸宅の虚しい例として登場する。平安時代の宮中では白楽天の漢詩は誰でもそらんじていたと推測される。奈良時代は中国の六朝時代で、呉国から漢字文化が流入したため、漢字は呉音で読まれていた。隋・唐との交渉が始まった平安時代には北方の漢音が入ってきた。馬家は呉音で「バカ」となる。

上方で「アホ」が「アホウ」を追い払うのは18世紀後半以降で、同時に「バカ」が消えていく。著者は、15世紀頃に禅僧または商人によって日本にもたらされた明の白話文学の中に「阿呆」があり、「アホウ」と読まれたと推論している。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2017年1月2日
読了日 : 2017年1月24日
本棚登録日 : 2017年1月2日

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