ビーガンになることについて、健康、畜産業、環境負荷の3つの観点から論じており、バランスがいい内容だった。
・産卵鶏(レイヤー)のひよこは孵化後、性別を鑑定されて雄は捨てられるか、ミンチにされて肥料となる。産卵効率が落ちた使用済みの雌鶏は筋肉が少ないため、ポットパイか動物の餌に加工される。
・牛は20年ほど生きる動物だが、乳牛は産乳量が減る5歳頃になると食肉処理場に送られるが、肉は固いため、ファストフードのハンバーガー等の安い挽肉として用いられる。乳牛が生んだ雄の子牛は、食肉産業に売られる。
・世界の穀物の38%は家畜の餌として用いられる(Kendall, Pimentel, 1994)。
畜産業の実態については「雑食動物のジレンマ」でも描かれていたが、この本でも新たな実態を学ぶことになった。欧米人にベジタリアンが多い理由もわかってきたし、現在の畜産業は数十年後には過去の話になっていくのではないかとも思った。動物性蛋白ではあるが、ヘルシーとされる魚食が近年世界的に増えてもいるのも、その表れだろう。
健康や環境負荷の観点を主目的に読んだので、ビーガンになることにはほとんど関心がなかったが、植物を中心とした食生活をもっと進めて行こうという気持ちにはなった。巻末に、日本人の立場で健康面からの注意がコメントとして載せられているのは、気が利いている。日本人にとって出汁を摂らない生活は考えにくいし、魚はDHAやEPAの点で健康に良い。ビタミンB12を摂るために乳製品や卵も必要という指摘も親切。現実的な範囲で、自らの健康に良い食事を心がけるだけでも、植物を中心とした食事になっていくだろうと思う。
- 感想投稿日 : 2012年7月25日
- 読了日 : 2014年5月16日
- 本棚登録日 : 2012年7月25日
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