お金の教育がすべて。 7歳から投資マインドが身につく本

  • かんき出版 (2019年5月24日発売)
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「お金の教育」という言葉が、流布して暫く経ちますが、
決定的に抜け落ちているのが、「日本の教育」を、どのように捉えているかという視点だと思います。
正直いうと、株とか、投資の基礎的知識、金融の歴史を、小さい頃に親から学んだとしても、
あまり意味がないと思います。学ばないよりは、いいでしょうが。
ただ、本質的な解決策から、かなりズレていると思います。

なぜなら、多くの親が「勤め人」だからです。
わかっている人はわかっていますが、この方が言うような「お金の教育」というのは、
まず「勤め人」には、できません。
親が野球選手で、冒険家になる方法を教えてくれと言っているようなものです。

「日本の教育」というのは、如何に優秀な「勤め人」になるかで、学校体系が出来上がっています。
その仕組みにどっぷりと浸かることが半ば強制されています。
決して、自立した思考を培うなんてものは、日本の教育基本法を読んでも、どこにも書いていません。
もともと、国民学校から始まってる日本の教育は、以前は軍人の養成でした。
今は「勤め人」を養成するために、作られています。
2020年から新しい学習要領うんぬんと、教育現場は、慌てふためいていますが、
官が作った、つまり典型的な「勤め人」達が作った教育に、
自立した思考とか、生きる力とか、問題解決思考(そもそも、彼らが教育問題を、
何も解決していないという皮肉)なんて、身につくはずがありません。
日本の教育は、最初から最後まで、型にはまった子を作り出すことです。

そうではなかったら、いわゆる「就活」がまるで宗教的儀式のようになっていません。
外国の方から見ると、軍隊みたいだなと言われるでしょう。
スーツ文化も、その名残みたいなもんです。

この方が、「お金の教育」を施して、どういう人材になってもらいたいかは、
およそ資本家の定義と変わりません。
ただ、資本家を養成するには、まず日本の教育や「勤め人」が多数を占める国では無理です。
日本の教育のゴールは、どこまでいっても、「どこに所属するか」ですから。
そのために小さい頃から、多くの時間を割いて努力します。
今は、この所属先が、機能不全に陥っていて、どうしもない状態にありますが、
それでも、「どこに所属するか」が日本人の一番の重要な事項になっています。
これが、今の日本の不幸です。
ただ、こういった体制を改革することは、まず不可能です。

この本では書かれていませんが、お金の教育の要諦は、
リスクをどう考えるかにつきます。
つまり自分の判断に責任をもって、経済合理的に行動することです。
そして、失業と破産を知ることです。
お金の教育の裏返し的本質は、失業と破産は、この社会では当たり前にあることだと
知ることです。しかし、「勤め人」には、決してできません。
失業は、恥ずかしいこと、破産は、人生の破綻を意味しているからです。

「勤め人」という選択をした時点で、それがどういうリスクなのか、
経済合理的にどういうことなのか、これが、日本では、全く考えられていません。
なので、「勤め人」になって数年もすると、「家でも買うか」という空気が、
なぜか出てきて、「ありえないようなリスク」を平気で、
選択する人が後をたちません。
お先、自ら所属先の奴隷のようになるような人生を選択してしまう人です。

これを著者は意図的なのか、それとも、
日本の歴史や文化に疎いのか記述されていません。
正直いうと、投資や株式、財務諸表の考え方は、リスクをどう考えるかに比べたら、
まさに著者がいうように80:20の法則の20で、あまり重要ではないことです。
著者は、見た目は外国人だけど、中身は日本人としていますが、
おそらく日本の普通教育を受けていないと思います。

個人的には、日本の教育を受けた人が書いた、
資本家、投資家になるための「お金の教育」なら、
澁澤栄一の『論語と算盤』の方が、お金の教育を、日本人が考える上で、
よほど参考になると思います。
日本人が、お金の教育を考える上で、
もっとも重要なテキストであり、考え方だと思います。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2019年12月2日
読了日 : 2019年12月2日
本棚登録日 : 2019年12月2日

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