舞台の設定はSF、パラレルワールド的だけど、面白さは設定ではなくて微妙な人間関係の描写にあると思った。男一人を挟んだ二人の女の冷戦が主人公の目から語られる。
英文学なのに日本の女性作家の描く女のドロドロを読んでいるような気分になった。作者は男性なのに女友達の難しい関係をなぜ書けるんだろう。
カズオ・イシグロは「信頼できない語り手」が出てくる小説の名手とされている。この作品でも、主人公が自分の正しさを何度も再確認しながら、過去の経験を語る。記憶のほころび、隠蔽、都合のいい語りなおしで主人公以外の人物の心境のみならず、主人公の心境までもあやふやでつかみがたく、もやに包まれて見えなくなってしまうようだった。
第三部は主人公の妄想なのではないかとも思った。自分の物語を美しく幕引きするためにでっち上げた嘘なのではないかとか。最後の美しいエンディングにもそれまでの胡散臭さから素直に感動できない…。
Ruthと主人公は本当に友達だったのかね。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
英語
- 感想投稿日 : 2009年12月28日
- 読了日 : 2009年12月28日
- 本棚登録日 : 2009年12月28日
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