日本のいちばん長い日 決定版 (文春文庫)

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レビュー : 164
著者 :
コジコジさん ノンフィクション   読み終わった 

1945年8月14日ポツダム宣言受諾そして翌15日の玉音放送に至るまでに起こった叛乱未遂の、大日本帝国中枢の予断を許さぬ緊迫した長い一日の動静に迫る。

まず文藝春秋チームの取材力と史料収集力それらの一編の本に仕上げる構成力に驚嘆させられる。玉音放送の裏に隠れた歴史の真実、宮城事件における陸軍中堅武官らの暴走は始まったものを終わらすことの難しさ、井田中佐・椎崎中佐・畑中少佐らの絶望と安堵と一縷の望みが混濁した複雑な感情を推考させられる。

終戦直前の閣僚は日本史のなかでも比較的評価が高いが、自分自身の誇りより実をとり命を賭した鈴木貫太郎首相や、時間との闘いのなか微妙な立ち位置での絶妙な交渉を行った東郷茂徳外務大臣など「勝利の英雄」とは違う英雄像がここにある。ゆえに阿南陸相の自刃は何とも言えぬ遣る瀬無さを感じる。

歴史を見れば「あと1ヶ月早くポツダム宣言を受諾していれば」と思うが、一方で「あと1ヶ月遅ければ」当時の米ソ中の政治的思惑により領土分割もあり得たわけで、8月15日の聖断とそれに纏わる事柄は必然であったのかもしれない。

大日本帝国の失策を分析したドキュメンタリーは『失敗の本質』や『ノモンハンの夏』など名作が多いが、本作は映画(1967年版)と合わせて是非見て欲しい。

ところで本作品、大宅壮一編だと思ってたが決定版で半藤一利編となっていた。狐に抓まれた気がしたが「あとがき」でそのことに触れられており、「長い日」のほかの日にも色々複雑な事情があるのであった。

レビュー投稿日
2018年8月20日
読了日
2018年8月20日
本棚登録日
2018年8月7日
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