「小説宝石」に連載された6章の単行本化。
テレビドラマのイメージで、明智光秀は織田信長より若いと思っていたが、
実は20才ほども上で、本能寺の変は67才の時だった。
作者は、本能寺の変は理知的な光秀の行動としてはおかしいと思い、その原因を光秀の「ぼけ」だとしている。
書かれている症状は、最近のことを忘れる認知症。しかも、どんどん進行する。信長が自分を殺そうとする幻覚を見て、信長を殺すことを決断した。これは、ルビー小体型の認知症じゃないのか。
本能寺の変の直後の山崎の合戦からと、変の3年前からとの2つの時系列が交互に書かれるので、いささかわかりにくいが、光秀の性格、とりまく家臣たち、織田家中で置かれている立場、がよく描かれている。
以下引用
「 光秀は七十近い老齢なのに、跡継ぎの子はまだ幼い。そして信長との間柄は、どこでしくじったのか、以前ほどうまく行っていなかった。そのまま大名として家をつづけられる、ずいぶんとあせっただろう。
その結果が本能寺だ。ひとりの老人のあせりが天下を覆したのだ。」
『光秀曜変』というタイトルも、焼く間に予想のつかない不思議な変わり方をする「曜変天目」茶碗から取られているし、各章のタイトルも茶碗ができ上がっていく過程から付けられている。
最後に細川幽齋(本作中では長岡兵部と表記)が、光秀を「曜変天目」になぞらえているが、作者の気持ちでもあるのだろう。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
時代小説
- 感想投稿日 : 2012年12月18日
- 読了日 : 2012年12月18日
- 本棚登録日 : 2012年12月18日
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