戦艦武蔵のさいご (ノンフィクション・ブックス)

著者 :
  • 童心社 (1974年4月25日発売)
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本棚登録 : 19
感想 : 5
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【初めての戦争本】
 昭和49年生まれの僕が初めて「戦争の悲惨さ」を意識に刷り込んだ初めての作品。

 広島のおとなりである岡山育ちの小学生であった僕が親しんでいた戦争ものの作品にはもちろん「はだしのゲン」もあって、当然愛読していたのだが、少年向けマンガであったこともありやはりエンタメ色が強かったのと、戦争ものというよりは「原爆もの」というイメージが強かった。(「原爆」というテーマはこれはこれで非常に重要なテーマで僕のメンタリティーに大きな影響を及ぼしているのだが、それはまた別のお話という事になります。)

 本作は、おそらく小学校高学年くらいの時に学校図書館で借りて読んだものであろうと記憶している。実は40代になってこの本のことを思い出すのに結構時間がかかってしまった。
 はじめ吉村昭の「戦艦武蔵」かなと思って読み始めたのだが、読み進めている途中でも「あれ?この本だったかな?だとしたら初めて読んだのは中学生くらいの時かな?小学生が読めるレベルの文体とボリュームではないしなぁ・・・」となかなか判断ができなかったのだが、読了してから「多分違うな」と確信した。

 そこで今度は、「武蔵」「挿絵」「児童向けなのに凄惨な描写」「青い表紙」という記憶を頼りにもう一度検索明けなおしたら、この本に行き当たり、まず表紙の画像をみて、「あ、間違いなくこれだろう」と。
 それで、ちょっと高価ではあったが、書籍版の新品を購入、読了して改めて「この本だ」と確信したのでした。

【あらすじ】
 物語は武蔵最後の戦いとなるレイテ湾沖海戦「捷一号作戦」の発動から始まる。吉村「武蔵」では物語が85%進んで残り僅かのところだ。基本著者≒主人公の一人語りプラスときどき主人公の語りに神目線付与といった文体で物語は進められる。
 作戦前に遺書を書くところから始まり、上官、同僚との親密な語り合いを経て、戦闘に突入し凄惨な状況をへて、沈没、退艦、奇跡的救出という物語のなかに、軍艦とは?戦闘とは?生きるとは?天皇とは?軍部とは?という事に対して思いをはせる主人公や周辺の人々のドラマが錯綜する。

【所感】
 特に、巨大苛烈な銃弾に対し、人間がいともたやすく引き千切られていく死の描写は圧巻であり、「…どろりとした、うす赤い、おかゆのような…」という表現に、小学生であった僕はいたく衝撃を受けたものである。(そして今回、この一文を読んだ時に本作が小学生の時に読んだ作品であると完全に確信。)

 そういった実存ドラマを補強する挿絵(画家:藤沢友一)や、武蔵や同型艦である大和の諸元データ、作戦行動図などの史料などもふんだんに盛り込まれた本書の構成は、児童向けとは思えないほどの内容だ。

 昨今の世の中事情ではこういった内容の作品は児童向けとしては敬遠されるかもしれないが、少なくとも僕はこの本を敬遠しなかった事よって、戦争を知らない世代でありながら、何としても戦争は敬遠したいものだというメンタリティに至ったと感じているし、負の遺産をオブラートに包まずに伝えている本作のような作品は大切に紹介していきたい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 0909_児童文学
感想投稿日 : 2020年10月24日
読了日 : 2020年10月24日
本棚登録日 : 2020年10月24日

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