人質の朗読会

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本棚登録 : 3018
レビュー : 622
著者 :
蒐さん 小説   読み終わった 

読み終えた後、哀しみと幸福感が同時に胸に込み上げてきました。
遠い異国の地で拉致された8人の日本人。人質となった彼らはやがて互いに自らの記憶を語り合う「朗読会」をするようになる。これはそんな彼らの在りし日の思い出が綴られた物語。

悲劇的なプロローグにはどきっとさせられたが、後に続く人質たちの物語はどれも優しさと温かさに満ちた不思議な味わいです。
彼らの語るその言葉は、何気ない出来事を語っているのに、どこまでも優しく、謙虚で、あたたかい。
人質たちの在りし日の記憶の物語を読んでいる間はその不思議な空気に浸っていることができるのですが、最後の行の語り部のプロフィールを読むと、一気に現実に引き戻され、やりきれないような切ない気持ちになります。
と同時にだからこそ、彼らの物語がいっそう美しいもののように感じられるのかもしれません。

『猫を抱いて象と泳ぐ』を読んだときにも思いましたが、小川さんは「死」というものに悲劇性を持たせない描き方をしているような気がします。この作品からは「死」の悲しさも感じますが、それよりも「生」の美しさのほうを強く感じました。
哀しい物語ではありますが、作品全体に漂う空気はすごくあたたかみのあるものであり、この雰囲気は小川作品ならではのものだと思います。
個人的には『B談話室』が好きでした。

レビュー投稿日
2012年4月8日
読了日
2012年4月7日
本棚登録日
2012年4月8日
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