駒場図書館ジュニア・スタッフおすすめ電子ブック

 法とわたしたちの生活の接点を、国家や社会、国際関係といったさまざまな切り口で概説する一冊。法とはそもそもどういうものであるのか、という導入に始まり、グローバル化の進展やインターネットの普及などを踏まえた、現代における法の状況まで、広く見渡すことができます。豊富な内容が一冊にまとまっているため、専門用語が多く掲載されているという面はありますが、具体例を挟むなど工夫が凝らされた解説のおかげで、初学者である評者でも、あまり難解さを感じずに読み進めることができました。
 本書の内容は、法学の勉強への第一歩としてはもちろん、日常生活のさまざまな場面で役に立つのではないでしょうか。例えば、労働問題や国際紛争などといった、法に関係する報道を目にした際に、本書の関連する章をひらけば、そのニュースの論点をより深く理解することができるでしょう。もしもその報道の中に知らない単語が出てきたら、本書の太字部分を追って周辺の説明を読み、用語集として活用するのも良いかもしれません。さらに、法に関してより深い知識を得たいと感じたならば、「参考文献」欄が有益なブックガイドとなるはずです。
 この一冊が、今も、そしてこれからも、あなたの疑問を解決し、学びを支える助けとなってくれるかもしれません。
(文科三類・2年)(3)

【学内URL】
https://elib.maruzen.co.jp/elib/html/BookDetail/Id/3000104159

【学外からの利用方法】
https://www.lib.u-tokyo.ac.jp/ja/library/literacy/user-guide/campus/offcampus

2022年9月29日

読書状況 読み終わった [2022年9月29日]
カテゴリ e-book

 なぜビールを飲めるようになるのか不思議に思ったことはないでしょうか。ほかにも、コーヒーやわさびなど苦みや刺激が強い食べ物がありますが、これらは一見(一味でしょうか。)身体に悪影響を与えそうなので、先人がなぜ食物にしようと思ったのか考えさせられてしまいます。

 本書は、こういった疑問を含め人間の食行動に関する知見をまとめ、わかっているようでわかっていない人が多いであろう「なぜ人は食べるのか」という謎に挑戦した一冊です。

 ビールの例に戻ります。ビールは、成人のみなさんはご存じのとおり苦みがありますし、新しいものを摂取する際は恐怖を伴うようです。ではなぜ飲めるようになるのか。筆者によると、ビールを飲めるようになる理由は、「同調」「錯誤帰属」「承認の欲求」の三つのキーワードによって説明されうるということです。同調は、他者がある食べ物をどういった様子で食べているかに自らの食の嗜好が影響されることです。錯誤帰属は、他者と食事の場を共有すると、そこから得られる満足感と食物から得られる満足感を混同してしまうというようなことです。そして承認の欲求は、文化的観念を背景として、摂取することで自尊心がくすぐられるということのようです。ここでいう文化的観念とは、具体的にはビールは大人の飲み物であるという憧れのことです。

 以上、ビールの例を取り上げましたが、コーヒーやわさびについても同様に言えるのでしょうか。はたまた全く異なるメカニズムが適用されるのでしょうか。「食べる」ということに関する疑問は尽きません。この秋、あらためてこの味わい深いテーマについて考えてみてはいかがでしょうか。
(文科三類・2年)(6)

【学内URL】
https://elib.maruzen.co.jp/elib/html/BookDetail/Id/3000049362

【学外からの利用方法】
https://www.lib.u-tokyo.ac.jp/ja/library/literacy/user-guide/campus/offcampus

2022年9月27日

読書状況 読み終わった [2022年9月27日]
カテゴリ e-book
タグ

 スペイン語を選択された一年生のみなさんのなかには、膨大な単語の暗記や活用の習得に少し疲れてきた方もいらっしゃるかもしれません。そんな方におすすめしたいのが、スペイン語の基礎を平易に解説したこの一冊です。
 スペイン語の解説書というと、活用表がたくさん並んだ文法書を思い浮かべるかもしれませんが、本書はそういった本とは少し違います。本書の多くの部分では、まず簡単で短い文が提示されます。筆者はその文を、読者と一緒にじっくり観察し、品詞の種類や語順、語形変化などといった「しくみ」を丁寧に解き明かしていきます。筆者は文中の単語ひとつひとつに目を向けて、「どうしてその形になるのか」をあますところなくレクチャーしてくれるため、たいへんわかりやすく、納得がいく解説となっています。さらに、ところどころにクイズが挿入されているため、はじめから順に読んでいくだけで手軽に復習ができるのもありがたいところです。また、全体をとおして、語りかけるようなやわらかい文体で書かれている点も魅力です。
 冒頭では、スペイン語を現在勉強されている方におすすめ、と書きましたが、もちろん、そうではない方も楽しめる一冊となっています。これから学んでみたいという方は入門書として、習熟している方はあらためてスペイン語の構造を楽しむための一冊として、手に取ってみてはいかがでしょうか。
(文科三類・2年)(3)

【学内URL】
https://elib.maruzen.co.jp/elib/html/BookDetail/Id/3000056799

【学外からの利用方法】
https://www.lib.u-tokyo.ac.jp/ja/library/literacy/user-guide/campus/offcampus

2022年9月21日

読書状況 読み終わった [2022年9月21日]
カテゴリ e-book

本書の目的としては、精緻に厳密に数学を行うことではなく、数学を必要とする学生がその基礎を例題等を糸口に身につけることである。そのため、イプシロン-デルタ論法などの難解な証明でつまづいてしまう数学初学者の入門書として優れているだろう。数学的説明のみならず感覚的に理解できる日本語の説明が付されているのも理解を助ける。加えて、微分の入り口からTaylor展開までの道筋がレイアウトも含め綺麗に整備されており非常にわかりやすい。一方で、実数の完備性など一部重要事項の証明が割愛されており厳密性には欠けるため、より厳密に数学を学ぶためには他の書籍を参照する必要がある点が玉に瑕である。しかし、人文科学徒でも数学的素養を身につける必要性が高まっている今、数学が苦手な人の最初の一冊には適しているのではないか。
(文科二類・2年)(5)

【学内URL】
https://kinoden.kinokuniya.co.jp/u-tokyo/bookdetail/p/KP00066081

【学外からの利用方法】
https://www.lib.u-tokyo.ac.jp/ja/library/literacy/user-guide/campus/offcampus

2022年9月13日

読書状況 読み終わった [2022年9月13日]
カテゴリ e-book

本書は、倫理学の一分野であるメタ倫理学の入門書である。本書はポップな表紙ながらも、難解なメタ倫理学を平易に概説的に紹介しており、初学者にとっておすすめの一冊だ。メタ倫理学とは倫理学において前提とされていることを再検討する学問であり、「なぜ道徳的行為をする必要があるのか?」などの素朴ながら核心的な問いへの応答を目指すため、同様の疑問を抱いたことがある人にもおすすめである。「倫理」に少なからず興味がある人、倫理に対して疑問を抱く人は是非手に取ってほしい一冊だ。なお、駒場で哲学を研究している鈴木貴之先生も本書を推薦していたことを付記しておく。
(文科二類・2年)(5)

【学内URL】
https://elib.maruzen.co.jp/elib/html/BookDetail/Id/3000047714

【学外からの利用方法】
https://www.lib.u-tokyo.ac.jp/ja/library/literacy/user-guide/campus/offcampus

2022年9月13日

読書状況 読み終わった [2022年9月13日]
カテゴリ e-book

計量社会学者の筒井淳也らによる社会学入門書。社会学の個別テーマを挙げ、その営みを平易に解説しているのに加え、社会学という学問分野の特徴やその方法論についても章が割かれている。また、問いに応じて調査の方法や統計的手法が異なる等、学者からすれば当然でも初学者が見逃しやすいであろう点に説明が付されているのは、非常に好印象である。社会学の概要を知りたい人、更なる学習の足場固めをしたい人におすすめの一冊だ。
(文科二類・2年)(5)

【学内URL】
https://elib.maruzen.co.jp/elib/html/BookDetail/Id/3000048990

【学外からの利用方法】
https://www.lib.u-tokyo.ac.jp/ja/library/literacy/user-guide/campus/offcampus

2022年9月13日

読書状況 読み終わった [2022年9月13日]
カテゴリ e-book

東京大学文学部の教授である阿部公彦氏の著作である。専門用語は殆ど使われず、平易な語り口のため非常に読みやすい。梶井のような小説家から伊藤比呂美などの現代の詩人まで網羅しており、触れたことのない詩・詩的な小説に出会えるおすすめの一冊である。個人的に、梶井基次郎の『檸檬』を引いた「名づけ」についての解説は、『檸檬』の良さを端的に表しつつその詩的要素を明らかにしており、勉強になった。
(文科二類・2年)(5)

【学内URL】
https://elib.maruzen.co.jp/elib/html/BookDetail/Id/3000016300

【学外からの利用方法】
https://www.lib.u-tokyo.ac.jp/ja/library/literacy/user-guide/campus/offcampus

2022年9月13日

読書状況 読み終わった [2022年9月13日]
カテゴリ e-book
タグ

文学者たちが当時の科学をどのように受容し、文学の世界に還元していたのかの検証を通じて、「日本近現代文学」と「理論物理学」という一見遠い位置にあるふたつをつなげる、面白い一冊です。
特に中心となるのは昭和初期の文学理論や作品。この時期は、相対性理論や量子力学の登場によって、それまでの時代の物理学の前提が大きく揺らいだ時期でした。科学の変動、「物質」と「精神」への理解の変化を目の当たりにした文学者たちはそれをどのように捉え、思考していたのか。相対性理論を日本に紹介した物理学者で歌人・石原純や、横光利一・中河與一・稲垣足穂など新感覚派の面々などの理論・作品が詳細に検討されています。思考の応用のための補説として、東浩紀『クォンタム・ファミリーズ』論、円城塔『Self-Reference ENGINE』論も併録。
博士論文を元にした本で分量も多いため、一冊としての議論の全体像を把握するには難解で骨太な書ではありますが、そのぶん、昭和の文学を読むために与えてくれる示唆も多いでしょう。
今の目線から見ると「理系/文系」「科学/文学」と簡単に分けて考えてしまいがちですが、いつの時代もそれらは密接に関わり合い、影響を与え合ってきたのであって、「同時代の最先端の科学の知見を人文学にどのように応用していくのか」(またはその逆)という問題は、この本で扱われた昭和初期に限らず、令和の現代でもとても重要なテーマです。そうした意味で、昭和の作家たちの取り組みを知ることは、近現代文学を学ぶ人のみならず、自分の生きる時代の知を広く吸収しようとするあらゆる人にとって、有益なものでありうるでしょう。
(文科三類・2年)(4)

【学内URL】
https://elib.maruzen.co.jp/elib/html/BookDetail/Id/3000108526

【学外からの利用方法】
https://www.lib.u-tokyo.ac.jp/ja/library/literacy/user-guide/campus/offcampus

2022年9月13日

読書状況 読み終わった [2022年9月13日]
カテゴリ e-book

 他者への想像力を働かせるのは難しい。その他者が目に見えない場合はなおさらだ。また、見えている場合でも見えないことにしているという場合もあるだろう。こういったことは、他者への差別と関係するのだろうか。

 本書は、愛国心と他者への無関心の論理を「伏字」と結びつけて論じている点で興味深い。伏字とは、「出版する側が、見えてしまったら法に触れる、禁止されるべき文字や文章を、自主的に〇や✕などの記号に置き換え」るものであり、戦時中に行われた。筆者は、伏字の問題点として次の三つを挙げている。まず、見えない部分があっても大体の意味は分かるという感覚、つまり暗黙の了解と共感の枠組みを作り出すということ。それでも伏字は隠された謎であり未知の他者を想起させること。そして最終的に伏字は無視されるということだ。伏字に固執しては意味から遠くなっていってしまうため、暗黙の了解に従って、存在しないものとして処理する姿勢が要求されるのだ。以上の問題は、共通基盤を共有するマジョリティがマイノリティたる他者を無視するという構造と関連しているのではないかと筆者は主張する。

 「他者への差別は、『見える』『見えない』と関係するのか」という問いにたいして、伏字という画期的な視座を提供している本書。今日、多文化・多様性が謳われるなか、マジョリティの視点が前提とされている場面がみられる。そういったことに疑問を感じる人、日本史やメディアに関心がある人などに広くおすすめしたい。
(文科三類・2年)(6)

【学内URL】
https://elib.maruzen.co.jp/elib/html/BookDetail/Id/3000043528

【学外からの利用方法】
https://www.lib.u-tokyo.ac.jp/ja/library/literacy/user-guide/campus/offcampus

2022年9月13日

読書状況 読み終わった [2022年9月13日]
カテゴリ e-book

 どうすればよいレポートが書けるか。大学生の多くが頭を悩ませる問題ではないかと思う。東大の場合はどうか。「初年次ゼミナール」を受講して研究倫理を学び、日本語レポートの執筆に挑戦。さらに「ALESS/A」では英語での執筆も経験。これでレポートについての基礎知識は一通り得ることができた。完璧だ。これからはどんな課題が出てもこわくない。二講座で身につけたことを活かし、読者を唸らせる素晴らしいレポートを次から次へと生み出すことができるだろう。
 しかし、評者にはできなかった(そして今もできていない)。
 もちろん、上記の二講座が良くなかったといいたいのではない。どちらの授業においても、論理的なライティングの方法や、重要なアカデミック・スキルの数々を学ぶことができた。
ただ、評者がつまずいたのは、そういった、整った文章や明快な論理、学問上の作法といったポイントにおいてだけではなかったのである。最も悩ましかった(そして今も……)のは、「いつも締切ギリギリになってしまう」「計画を立てても守れない」といった、大学の先生に質問するのはなんだか憚られるような、そもそも自分の性格のせいではないか……と思えてくるような問題の数々である。
 そんな中、今後の指針となりそうなのがこの一冊。本書は、慶應義塾大学においてレポート執筆のサポートをする学生スタッフが、よいレポートを書く方法をまとめたものである。自身の経験や寄せられた相談をもとに「学生ならではの視点」(5頁)で著されているので、「締切間近に着手することに……」「サークルやバイトで忙しくて……」といった「レポートあるある」への対処法がぎっしりつまっている。ただし、それらは「効率の良い単位の取り方」(同頁)をレクチャーするものでは決してない。たとえスタートラインこそ五里霧中の状態であっても、本書の内容を一つひとつ実践していけば、読者は章を終えるごとに自分の成長を実感できるだろう。読み終える頃には、「「効率」を求めてレポートを適当に仕上げるなんて、もったいない」と思い始めているかもしれない。そう、本書を貫くメッセージは、まさにこういうことである。せっかくのレポート、せっかくの学問、楽しめないのはもったいない!
(文科三類・2年)(3)

【学内URL】
https://elib.maruzen.co.jp/elib/html/Viewer/Id/3000017468

【学外からの利用方法】
https://www.lib.u-tokyo.ac.jp/ja/library/literacy/user-guide/campus/offcampus

2022年9月7日

読書状況 読み終わった [2022年9月7日]
カテゴリ e-book

加藤典洋さんは『敗戦後論』や『テクストから遠く離れて』などの評論で知られる文芸批評家です。『「天皇崩御」の図像学』は、昭和から平成という転換期に書いた評論をまとめた比較的初期の著作『ホーロー質』を再編集した一冊。
歴史や政治・文学・映画などさまざまなジャンルを股にかけ、独自の着眼点と大胆な発想で社会の本質を鋭く衝くところが加藤さんの評論の魅力ですが、この本でもさまざまなテーマにわたって、ひとりの批評家の思考の冒険が示されています。
中心となる評論「図像と巡業 −「天皇崩御」の図像学」は、その表題通り「図像」と「巡業」を切り口にした大胆な天皇制論。スポーツ観戦の快楽、ディズニーランドの見取り図、高村光太郎の詩など、あらゆるモチーフが「天皇」とそのイメージをめぐる議論に関わり合っていくさまは見事です。
その他、中野重治とスターリン、村上春樹『TVピープル』、「ステレオタイプ」をめぐる日本映画論など、多角的な論考を収載。ごく短いエッセイのようなものも含まれているので、気になるタイトルから読んでみるのもいいでしょう。
『敗戦後論』や『可能性としての戦後以後』など、後年の重要な著作へと至る批評家の足取りの記録としても興味深い著作です。
(文科三類・2年)(4)

【学内URL】
https://elib.maruzen.co.jp/elib/html/BookDetail/Id/3000045710

【学外からの利用方法】
https://www.lib.u-tokyo.ac.jp/ja/library/literacy/user-guide/campus/offcampus

2022年9月5日

読書状況 読み終わった [2022年9月5日]
カテゴリ e-book

 城と言われて多くの人がまず思い浮かべるのは、姫路城や名古屋城のように、屹立する高石垣の上に豪壮な櫓や天守の立ち並ぶ城であろう。こういった城のことを近世城郭という。これに対して歴史に多少詳しい人なら、そうした城は実は少数派であることを知っているかもしれない。戦国時代までに築かれた城は、石垣の使用は限定的で、天守も存在せず、櫓に瓦や漆喰が用いられることもほとんどなかった。その一方で土塁や堀などを複雑に組み合わせることで、高い防御力を実現していた。こういった城のことを中世城郭という。

 それではこのどちらとも全く異なる城が、古代西日本の各地に存在していたことはご存知だろうか。いわゆる古代山城である。飛鳥時代から奈良時代初頭、7世紀後半から8世紀初頭にかけて、北部九州から瀬戸内海にかけての地域に建造された。その数は実際のところ30に満たず、中世城郭はもちろん、近世城郭と比べても、はるかに少ない。

 多くの城は石塁や土塁を巡らせ、山の頂部を一周して囲った構造をしている。どの城も巨大であり、最も小さいもので周囲1.7km、大きいものでは6㎞を超える。砦のようなものとは全く異なっている。古代国家が国家防衛のために築いた要塞群であり、朝鮮半島などの山城との類似性が認められている。中世城郭の系譜とは全くつながっておらず、この時代だけに存在した特異な城郭群である。

 本書は古代山城の役割などを概説するとともに、古代山城研究の最前線にも踏み込む、包括的な書籍である。「古代山城の性格と年代をめぐって」では、古代山城の特徴を概説したのち、古代山城の研究史をたどりながら、その性格を考える。「古代山城研究最前線」では、阿志岐山城、鬼ノ城、大野城、おつぼ山城などでの最新の成果から見えてきた実像に迫るとともに、韓国の山城との比較も試みたうえで、今後の研究を展望する。「東アジアの争乱と古代山城」では、東アジア国際情勢(新羅・唐・日本)の文脈に古代山城を置き、建造から衰退に至るまでの変遷を辿る。

 本書は古代山城の概説書として優れており、読みやすく書かれているといえる。中世城郭や近世城郭とは全く異なる古代山城の世界を知ることは、読者を大いに楽しませてくれるだろう。日本史のもう一つの可能性に思いを馳せることができる。

 そして現在の古代山城は、建物こそ残らないが、豪壮な石塁や土塁が残される城は多く、訪れる者を楽しませてくれる。西日本を訪ねた折には、本書を片手に、古代山城にも寄ってみてはいかがだろうか。
(文科三類・2年)(1)

【学内URL】
https://elib-maruzen-co-jp.utokyo.idm.oclc.org/elib/html/BookDetail/Id/3000040892

【学外からの利用方法】
https://www.lib.u-tokyo.ac.jp/ja/library/literacy/user-guide/campus/offcampus

2022年9月5日

 沖縄が日本に返還されて、50周年。今では、沖縄は日本の県の1つで、社会科は国語や数学といった五教科の1つというのが、多くの人がもつ感覚だろう。

 本書前半では、占領下の沖縄で、教育制度や教科書が米軍政府の意向や日本本土との関係性の影響を受けながら、変化していく歴史を辿っている。後半では、公民・地理・歴史といった各教科の内容を授業ノートや教科書から明らかにし、本土の教育とも比較している。占領下の沖縄を知らない若い世代にとって、アメリカや日本との関係に配慮しながら新たな教育をつくろうとする過程は、新発見の連続となるだろう。

 もう1つ注目すべきは、社会科に焦点が当てられていることである。日本にとって戦後すぐは「民主化」「非軍事化」のため、社会科が特別な地位にあったのだと感じられる。また沖縄にとっても、沖縄の将来に対する方針によって社会科で扱う内容は変化していき、国や県の未来を決める重要な科目であったことがわかる。特に歴史に重点を置いて書かれ、歴史が私たちの考え方に大きく影響を与えているのだと実感させられる。

 今では当たり前のことが、当たり前ではなかった時代を知ることで、意識していない重要な側面に気づかせてくれる本である。
(文科三類・2年)(2)

【学内URL】
https://elib.maruzen.co.jp/elib/html/BookDetail/Id/3000100301

【学外からの利用方法】
https://www.lib.u-tokyo.ac.jp/ja/library/literacy/user-guide/campus/offcampus

2022年9月5日

読書状況 読み終わった [2022年9月5日]
カテゴリ e-book

 本書の構成は少し変わっている。Unit1~Unit23に分かれ、議会・内閣関連のテーマから憲法改正まで基本的なテーマを扱う。各Unitの冒頭では、Topicと題してテーマに関係する新聞記事などが紹介され、例えば「法の支配と法治国家」を扱うUnitでは、ハイジャック機の撃墜を認める法の違憲審査について取り上げ、テーマについて考える例にもされている。
 
 法律を学ぶ本は、堅苦しく、理解するまでに何度も読み返して考えないといけないというイメージが崩された。内容としては、法律語句についての説明もされていて基本事項の理解ができるが、暗記教科書といった感じではなく、モンテスキューなど憲法に関する思想や判例の引用もあり、さらに専門的な学びへつながる土台になってくれる。途中に挟み込まれているコラムもまた面白い。学説で注目される「六権分立」や内閣法制局長官人事のちょっとしたエピソードなど、法学界・政界が垣間見える。

「法学の授業の前にこの本と出会えればよかったのに」と思った。触れたことのある話題で、深い内容にまでついていけるようになっていただろう。皆さんには、私のような後悔をしないためにも、この本を読んでみていただきたい。
(文科三類・2年)(2)

【学内URL】
https://elib.maruzen.co.jp/elib/html/BookDetail/Id/3000084575

【学外からの利用方法】
https://www.lib.u-tokyo.ac.jp/ja/library/literacy/user-guide/campus/offcampus

2022年9月5日

読書状況 読み終わった [2022年9月5日]
カテゴリ e-book

石川啄木の短歌の鑑賞を軸に、啄木の生きた明治時代の日本社会や、作家自身の実際の姿を描き出す一冊。
短歌の一語一語にこだわりながら、当時の時代背景や執筆の事情を丁寧に捉えた鑑賞が参考になります。歌集をただ読んでいるだけでは見えて来ない、啄木短歌の面白みを存分に味わえます。
たとえば『一握の砂』「忘れがたき人々 二」の歌「長き文/三年のうちに三度来ぬ/我の書きしは四度にかあらむ」。代用教員時代の同僚・橘智恵子への片恋を歌った歌として有名ですが、この歌について、啄木が智恵子に完成した『一握の砂』を送っていることを指摘し、この一冊こそ智恵子に出した四通目の恋文だったのだろう、と論じている部分は目から鱗です。
啄木というと何となく「暗い」「貧しい」「弱々しい」みたいなイメージがつきまとうかもしれませんが、国家権力を鋭く批判した評論「時代閉塞の現状」を執筆したことや、友人向けの手紙で超一級の美しい字を書いたなんてエピソードを読むと、彼の(意外な?)多様な姿がうかがえます。学生時代の友人たちや職場の同僚、そして妻・節子など、啄木をとりまくたくさんの人々についても知ることができます。
大逆事件や韓国併合など、啄木に影響を与えた明治時代の事件が詳細に説明されているほか、尾崎紅葉・有島武郎・夏目漱石などといった同時代の作家たちの作品も参照しており、この本をきっかけに明治文学全体にも視野を広げることができるでしょう。 
(文科三類・2年)(4)

【学内URL】
https://elib.maruzen.co.jp/elib/html/Viewer/Id/3000045118

【学外からの利用方法】
https://www.lib.u-tokyo.ac.jp/ja/library/literacy/user-guide/campus/offcampus

2022年8月24日

読書状況 読み終わった [2022年8月24日]
カテゴリ e-book

 外国語の勉強をしていて、さまざまな諺に出会うことがあるでしょう。そのとき、日本語にも同じような諺があることに気付いて驚いたという経験はないでしょうか。人間の知恵や心理というのは地域を越えたものなのかもしれません。また、ある諺はどこか別の地域で生まれたものが伝播してできたものかもしれません。

 本書は、日本語、英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語で共通の諺を集めた、少し風変わりで楽しい諺図鑑です。日本語の諺ごとにそれに類似した各言語の諺がまとまっています。諺ごとに付されている著者のコメントも、理解を助ける補足になるだけでなく、人間の普遍的な滑稽さに面白みと親しみを感じていることがうかがわれます。そのため、分かりやすいだけでなく、著者と一緒に諺を咀嚼しているかのような感覚にもなれるのが本書の魅力の一つかもしれません。

 共通の諺を一つ紹介します。「紺屋の白袴」です。英語では、“Shoemakers’ children go barefooted. (靴屋の子供達はいつも裸足。)” といい、フランス語やドイツ語、イタリア語でも同じような言い方があります。スペイン語では、“En casa del herrero, cuchillo de palo. (鍛冶屋の家のナイフは木造のもの。)”というそうです。地域が異なるため職業は異なりますが、自らの専門について、身内のこととなるとかえって無精になるのは普遍なのかもしれません。各言語圏にとっての紺屋、靴屋、鍛冶屋はそれぞれどういった存在なのか、日本語圏にとっての紺屋と英語圏にとっての靴屋がどういった関係にあるのか考えるのも面白いと思います。

 本書は、いわゆる「あるある」を異文化の人々と共有できているような「わくわく」を提供しています。外国語学習者は、本書を使うと楽しく学習できるかもしれませんし、そうでなくても楽しめます。また、本書をきっかけに、前著『五カ国語共通のことわざ辞典 ―日本語・台湾語・英語・中国語・韓国語対照―』(張福武, 2007, 慧文社)も合わせて読んでみてはいかがでしょうか。
(文科三類・2年)(6)

【学内URL】
https://elib.maruzen.co.jp/elib/html/BookDetail/Id/3000044367

【学外からの利用方法】
https://www.lib.u-tokyo.ac.jp/ja/library/literacy/user-guide/campus/offcampus

2022年8月10日

読書状況 読み終わった [2022年8月10日]
カテゴリ e-book

 先月の参議院選挙をきっかけに、政治について改めて考えた方も多いことだろう。本書は、「政治とは何か」といった基本的な問題から、一国内の政治の仕組み、さらには国際秩序や平和、貿易といったテーマまで網羅しており、タイトルの通り、政治学の入門書として最適な一冊である。本書を読めば、普段なんとなく「こういうものか」と認識していた政治の動向ひとつひとつについて学問的な定義や理論があり、それらに関して多くの議論が交わされてきたという事実に驚くはずだ。例えば、冒頭で触れた「選挙」というトピックを扱った章を見てみよう。皆さんは、周囲の人たちがどんな観点に基づいて票を入れる政党を選んでいるのだろうかと気になったことがあるかもしれない。本書でも、「有権者はどのようにして投票先を決めているのだろうか」(77頁)という疑問が扱われている。では、この問いに対して、政治学の理論を用いてどのように解答することができるだろうか? ……こういった政治にまつわる様々な疑問を、漠然とした感覚をもとに解釈するのではなく、正しい知識に基づいて分析することができるようになることは、自信につながるばかりでなく、今後の政治への関わりをより充実した有意義なものにしてくれるだろう。
 以上で紹介したような豊富な内容に加え、一人ひとりのニーズに合った様々な読み方ができることもまた、本書の魅力のひとつである。重要用語は青字に、要点の説明は太字になっており、そこだけ拾い読みしていっても概要が掴める。最初の章で政治学のものの見方を理解したあとは、興味のあるトピックが扱われている部分を重点的に読むのもよいかもしれない。もちろん、全体を精読すれば、幅広い知識が身につくに違いない。目次を見て少しでも気になったテーマがあれば、是非ページをめくって、政治学の扉を開いてみてほしい。
(文科三類・2年)(3)

【学内URL】
https://elib.maruzen.co.jp/elib/html/BookDetail/Id/3000094710

【学外からの利用方法】
https://www.lib.u-tokyo.ac.jp/ja/library/literacy/user-guide/campus/offcampus

2022年8月10日

読書状況 読み終わった [2022年8月10日]
カテゴリ e-book

本書では、平明に線形代数の基礎が示されている。重要な定理の証明やそれに関連する問題例が必要な順に並んでいるため、体系的に線形代数の基本を理解することが可能だ。また章末に豊富な練習問題が掲載されており、一冊で学習を完結することもできるだろう。特に前期課程の文系は、準必修の数学Ⅱの理解を助ける教科書としても活用が可能である。なお、線形代数を将来的にどのように用いるかの説明等はあまり掲載されていないため、各々で応用の具体例(例えばテイラー展開など)を調べるとより豊かな学びになるのではないか。
(文科二類・2年)(5)

【学内URL】
https://elib.maruzen.co.jp/elib/html/BookDetail/Id/3000044789

【学外からの利用方法】
https://www.lib.u-tokyo.ac.jp/ja/library/literacy/user-guide/campus/offcampus

2022年8月9日

読書状況 読み終わった [2022年8月9日]
カテゴリ e-book

 ロシアのウクライナ侵攻により戦争がより身近に感じられるようになり、「戦争」とOPACで検索したところ、この本と出合った。東京大学教授である加藤陽子氏の著作である。本書は、日清戦争、日露戦争、第一次世界大戦、満州事変と日中戦争、太平洋戦争が1章ずつ取り上げられている。文体が中高生に講義する口調であり、難しい専門用語は使われておらず、大変読みやすい。日本史を専攻している学生には物足りないかもしれないが、歴史資料の引用も多く含んでいて、大学の講義のようで、大学生の私が読んでも飽きるどころか、「そうだったのか!」と思わせられる連続である。

 特に印象に残ったのは本題に入った直後にある、「日本が中国に侵攻する・中国が日本に侵攻されるという物語ではなく、日本と中国が競い合う物語とすることで、日本の戦争責任を否定するわけではないが、見えにくくなっていた中国の文化的・社会的・経済的戦略を日本と比較しながら日中関係を語る(84頁、要約)。」という部分である。一面的な見方しか知らなかったが、柔軟な思考に導かれた。

 題名にもなっている、日本が戦争に進んでいった過程が一連の流れで語られ、スッと納得させられる。しかし、出来事を羅列した「覚える歴史」ではなく、「どうして、そのような行動をとったのか」「誰がどんなことを考えていたのか」を考える歴史である。教養として歴史に触れたい人におすすめな本である。
(文科三類・2年)(2)

【学内URL】
https://elib.maruzen.co.jp/elib/html/BookDetail/Id/3000061759

【学外からの利用方法】
https://www.lib.u-tokyo.ac.jp/ja/library/literacy/user-guide/campus/offcampus

2022年8月8日

読書状況 読み終わった [2022年8月8日]
カテゴリ e-book

「シェイクスピアほど映画に題材を提供してきた作家は、まずほかにいない」(p.4)。シェイクスピアの戯曲には、数々の映画翻案作品があります。原文を精読するだけでなく、後世の再解釈、翻案に驚き楽しむことこそ、「古典」を読む醍醐味かもしれません。
『映画で読むシェイクスピア』は、「ロミオとジュリエット」「マクベス」「ヘンリー五世」「ハムレット」などの戯曲について複数の映画版を比較しながら、作品の魅力に迫っていく本。「ロミオとジュリエット」では『ウエスト・サイド物語』、「マクベス」では黒澤明『蜘蛛巣城』なども扱っています。それぞれの映画監督や役者が作品をどう解釈し、表現しているのか。映画を実際にみてみたくなること請け合いです。戯曲の話自体の説明もついているので、シェイクスピアを読んだことがないという人でも楽しんで読めます。
読みやすい文体で、ブックガイド、映画ガイドとしても充実しています。シェイクスピアの世界への手引きに。
(文科三類・2年)(4)

【学内URL】
https://search.ebscohost.com/login.aspx?direct=true&db=nlebk&AN=190790

【学外からの利用方法】
https://www.lib.u-tokyo.ac.jp/ja/library/literacy/user-guide/campus/offcampus

2022年8月8日

読書状況 読み終わった [2022年8月8日]
カテゴリ e-book

 わたしたちの知覚は、本当に正確なのだろうか?記憶は、安定したものなのだろうか?大人であれば、たいていいつも論理的に考えることができるのだろうか?
 本書によれば、以上の問いに対する答えは全て「No」である。本書は、認知科学の知見にのっとりながら、人間の知覚や記憶、思考などにまつわる古典的な思い込みを、丁寧に覆していく。次々と明らかにされる人間の知覚・記憶の不確かさ、非論理的な思考のクセは、わたしたちの認知が思っているほど確固たるものでないということを教えてくれる。
 しかし、本書が着目するのは、認知の負の側面だけではない。例えば、私たちがアナロジーを用いて考えることができるのも、認知の特性のおかげである。ひらめきも、人間の認知が「ある性質」を持っているからこそ生まれる(「ある性質」と曖昧な書き方をしているのは、本書がひらめきについても驚くべき知見を提供してくれているため、本欄でのネタバレは避けようという意図からである。「驚くべき知見」が何であるかは、皆さんの目で是非確かめていただきたい)。すなわち、わたしたちの認知にはプラスにはたらく面とマイナスにはたらく面があるのだ。この認知の二つの側面に関する知識は、わたしたちが日常生活の中でさまざまなことを経験し、考える上での、新しい視点を提供してくれるはずだ。
 本書は、本学で著者が開講している「情報認知科学」の指定教科書でもある。2022年度Sセメスターの授業では、本書で触れられている実験の数々を体験することができ、本書の内容からさらに発展した最新の研究動向を知ることもできた。本書を読んで興味を持った方は、ぜひ著者の授業を受講してみてほしい。そうすれば、認知科学をさらに身近に感じることができるだろう。
(文科三類・2年)(3)

【学内URL】
https://elib.maruzen.co.jp/elib/html/Viewer/Id/3000027806

【学外からの利用方法】
https://www.lib.u-tokyo.ac.jp/ja/library/literacy/user-guide/campus/offcampus

2022年7月26日

読書状況 読み終わった [2022年7月26日]
カテゴリ e-book

 高師直は、南北朝時代の武将である。高氏は足利家の執事として、足利家の家臣団をまとめる執事の立場を相伝する家柄であり、師直も長じて執事に就いた。室町幕府成立後は幕府全体の執事として強権をふるったが、将軍足利尊氏の弟であり尊氏から政務を任されていた足利直義との間で対立を深め、殺害された。
 高師直と聞いて、どのようなイメージをお持ちだろうか。そもそもご存知でない向きもあるかもしれないが、ご存知であるという方も、おそらくはあまり良いイメージをお持ちではないだろう。無学にして粗暴、道徳を軽んじ、数々の悪行を重ねた武将といったところか。荘園侵略を推奨して新興武士層の支持を得たため、伝統を重んじ鎌倉幕府の再興を目指す直義と対立することになったと、これまでは考えられてきた。
 しかし筆者はそうした見方を否定する。実際の師直は信仰に篤く、教養を重んじる武将であった。師直は武士の所領拡大による幕府基盤の強化は目指したが、それはあくまでも合法的な手段によるものだった。師直ら高氏の所領は少なく散在的で、高氏は所領に強い関心を示していなかった。そうした高氏の保守的な手法は恩賞給付の遅滞を招き、高氏が武士層の支持を失って滅亡する原因となったという。
 このように師直はむしろ保守派政治家としての限界を多分に有する政治家であったが、それだけが師直の顔ではないと筆者は説く。師直はあくまで法の枠内ではあるが、幕府機構の大規模な改革を実現した。幕府の恩賞宛行を実行するよう執事が守護に命じる書状である「執事施行状」の発行がそれである。これにより恩賞宛行の実効性は格段に増した。
 師直段階の施行状はまだまだ不十分であり、そのことが師直の滅亡を招いたともいえる。しかし師直死後、鎌倉幕府体制への回帰を目指し施行状と恩賞を軽視した直義が滅亡すると、施行状の発行は急速に増加し、全ての恩賞宛行に際して施行状が発行されるようになる。そして足利義満の下で執事に就任した細川頼之は、施行状の発行を含む全盛期の師直が有した権限を再び掌握し、「管領」と呼ばれるようになった。以後この制度が全盛期の室町幕府を支えることになる。その一方で直義が復活を目指した鎌倉幕府的な機関は殆どが消滅ないし形骸化していった。全盛期の室町幕府は、師直の築き上げた遺産に依存していたのである。師直が日本史に果たした役割の大きさが窺い知れよう。
 本書は師直の評伝の形式をとる。初めに師直の祖先たちについて概説したのち、師直の生涯について順を追って記述し、師直没後の高氏の動向と、師直の信仰・教養について述べた後、師直の歴史的意義を論じて本書をとじている。
 日本史上きわめて重要な人物であるにもかかわらず、これまで高師直の学術的な評伝が編まれたことはなかった。本書が初の評伝である。通俗的な歴史像と実際の歴史の乖離が鮮やかに描き出される好著である。史実に迫る楽しさを体感できるのもまた、本書の魅力であろう。
 なお著者は本書を上梓したのち、『高一族と南北朝内乱』も著している。こちらは師直以外の高一族に注目し、高氏が輩出した多彩な武将たちの活躍を通して南北朝動乱を活写する。併せて読むことで理解をより深めることができると思われる。
(文科三類・2年)(1)

【学内URL】
https://elib.maruzen.co.jp/elib/html/BookDetail/Id/3000025025

【学外からの利用方法】
https://www.lib.u-tokyo.ac.jp/ja/library/literacy/user-guide/campus/offcampus

2022年7月25日

 本書は、20世紀までの社会学理論の歴史を概観したものである。具体的には、ジンメル、デュルケム、ヴェーバー、パーソンズなどの理論を時代背景と共に説明しており、社会学理論の変遷を頭の中で描きやすい構成となっている。また、社会学の〈記号論的転回〉としてリオタールやフーコーなどの現代思想家も取り上げられているところは注目に値するだろう。哲学者の目線から描かれたフーコーと社会学者の目線から描かれたフーコーの違いを感じることができ、非常に興味深かった。
 本書は726pという長さのため、通読を目的とするのではなく適宜必要な際に参照する書籍として扱うのが好ましいだろう。また電子ブックには検索機能が付いているため、気になる理論を参照しやすいのも推しポイントである。
(文科二類・2年)(5)

【学内URL】
https://elib.maruzen.co.jp/elib/html/BookDetail/Id/3000090683

【学外からの利用方法】
https://www.lib.u-tokyo.ac.jp/ja/library/literacy/user-guide/campus/offcampus

2022年7月20日

読書状況 読み終わった [2022年7月20日]
カテゴリ e-book

社会学の質的調査:即ちフィールドワークや参与観察、生活史の聞き取りなど、数字や量にあらわれてこないものを調査する方法について、わかりやすく丁寧に論じた教科書。ふつうの教科書にありがちな抽象的・無味乾燥な書き方ではなく、著者陣の具体的な経験や研究に根ざして詳しく教えてくれるところが質的調査の本らしく、初学者への優しさと愛情のある本です(読み物として面白くて、読み始めると止まらなくなるかも……)。
キーワードは「他者の合理性」。まったく理解できないように見える他者の行動でも、裏にはちゃんと事情や理由があって、ちゃんと合理性がある----フィールドワークやインタビューを通じて、それに接近し納得しようとすること。「質的調査に立脚する社会学の究極の目標は、他者の合理性の理解を通じて、私たちが互いに隣人になること」(p.34)なのだといいます。では、その質的調査はどんな風におこなっていけばいいのでしょう?
社会学を志す人はもちろんですが、「社会学ってそもそも何なのか」「一体何をしているのか」という疑問を持っている人にもおすすめです。小説やTVのドキュメンタリーが好きな人なんかにも、発見があるかもしれません。論文の書き方、ブックガイドも充実。
(文科三類・2年)(4)

【学内URL】
https://elib.maruzen.co.jp/elib/html/BookDetail/Id/3000046035

【学外からの利用方法】
https://www.lib.u-tokyo.ac.jp/ja/library/literacy/user-guide/campus/offcampus

2022年7月19日

読書状況 読み終わった [2022年7月19日]
カテゴリ e-book
ツイートする