教養としての認知科学

著者 :
  • 東京大学出版会 (2016年1月23日発売)
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感想 : 20

 わたしたちの知覚は、本当に正確なのだろうか?記憶は、安定したものなのだろうか?大人であれば、たいていいつも論理的に考えることができるのだろうか?
 本書によれば、以上の問いに対する答えは全て「No」である。本書は、認知科学の知見にのっとりながら、人間の知覚や記憶、思考などにまつわる古典的な思い込みを、丁寧に覆していく。次々と明らかにされる人間の知覚・記憶の不確かさ、非論理的な思考のクセは、わたしたちの認知が思っているほど確固たるものでないということを教えてくれる。
 しかし、本書が着目するのは、認知の負の側面だけではない。例えば、私たちがアナロジーを用いて考えることができるのも、認知の特性のおかげである。ひらめきも、人間の認知が「ある性質」を持っているからこそ生まれる(「ある性質」と曖昧な書き方をしているのは、本書がひらめきについても驚くべき知見を提供してくれているため、本欄でのネタバレは避けようという意図からである。「驚くべき知見」が何であるかは、皆さんの目で是非確かめていただきたい)。すなわち、わたしたちの認知にはプラスにはたらく面とマイナスにはたらく面があるのだ。この認知の二つの側面に関する知識は、わたしたちが日常生活の中でさまざまなことを経験し、考える上での、新しい視点を提供してくれるはずだ。
 本書は、本学で著者が開講している「情報認知科学」の指定教科書でもある。2022年度Sセメスターの授業では、本書で触れられている実験の数々を体験することができ、本書の内容からさらに発展した最新の研究動向を知ることもできた。本書を読んで興味を持った方は、ぜひ著者の授業を受講してみてほしい。そうすれば、認知科学をさらに身近に感じることができるだろう。
(文科三類・2年)(3)

【学内URL】
https://elib.maruzen.co.jp/elib/html/Viewer/Id/3000027806

【学外からの利用方法】
https://www.lib.u-tokyo.ac.jp/ja/library/literacy/user-guide/campus/offcampus

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: e-book
感想投稿日 : 2022年7月26日
読了日 : 2022年7月26日
本棚登録日 : 2022年7月26日

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