この本は、18世紀から今日までの富と所得の格差がどのように変化していったかを、世界各国から得られたデータをもとに解き明かし、「格差は拡大しているのか、それとも縮まってきているのか」という伝統的なテーマについて、これまでの思い込みと事実の欠如が目立つ議論に終止符を打ち、客観的なデータに基づいた結論を導き出そうとする野心的なものだ。
僕はもともと西洋の近現代史に興味があったが、この本で描写されている富と所得の変動と、ヨーロッパの政治史を見比べてみて、社会や国際情勢の変化が人々の所得や貯蓄に多大な影響を及ぼしていることに驚いた。
アメリカやヨーロッパ各国、そして日本の経済的変動に関するデータがグラフの形でも多く含まれているので、731ページという長大なボリュームの割には読みやすいが、膨大なデータから結論を導くと言うこの本の性質上飛ばし読みが難しく、ある程度の覚悟を決めてじっくりと取り掛かる必要があると思う。
逆に、ありがたいことに専門的な単語にいちいち解説がついているので、僕のような経済学の素人でも読み進めていけばそれなりに内容を理解できた。この春休みに読み応えのある作品を求めている人にはぜひおすすめしたい。
(文科Ⅲ類・1年)
【学内URL】
https://elib.maruzen.co.jp/elib/html/BookDetail/Id/3000017583
【学外からの利用方法】
https://www.lib.u-tokyo.ac.jp/ja/library/literacy/user-guide/campus/offcampus
- 感想投稿日 : 2022年1月28日
- 読了日 : 2022年1月28日
- 本棚登録日 : 2022年1月28日
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