永遠の0 (講談社文庫)

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レビュー : 5388
著者 :
こねさん 小説   読み終わった 

「永遠の0」(映画は見てないので原作のほうね)がダメダメなのは、現代パートの展開があまりに稚拙とか、回想パートが一本調子なうえにくっそ長いとか、文章がそもそもアレとか、数え上げたらきりがないのけど、なにより物語としての核心部分がまったく描けてないってことなんだよね。
それは「なぜ宮野久蔵だけが特異な行為者たりえたのか?」という問いに集約できる。本来考えなくてはいけないのは、宮部が特攻に臨んだ理由をめぐる問いではなくて、それ以前において彼がすでに特異な立場にあったことなんだよ。お国のために死ぬことを是とする中で、そもそもなぜ宮部だけが死を避け生きることを公言できそのために行動できたのかという特異さこそ、問われるべきなんだよ。
んで、その問いへの回答は「妻子のもとに生きて帰りたいという強い意志」なんてのでは十分でない。というか、ぜんぜん足りない。
だって、戦地には何万という特攻隊員、何十万という日本兵がいて、その多くが、生きて帰りたい、妻子と再会したい、と強く望んだはずだもの。そのことに関しては宮部も他の兵員たちも同じであり、何ら変わるところはない。それにも関わらず、彼らは自らの希望を口に出すことも能わぬまま死地に赴き、宮部だけが自らの意志を口にすることができ、また実際に行為を成すことができた。
それはなぜか?なにが宮部と他の兵員たちとを分けたのか?意志の力のみには還元できない決定的な要因が宮部と他の兵員たちとの間には横たわっていたはずで、それこそが問いの核心なんです。それを問わない限りは宮部の行為が理解されることはない。
でも、作中において、その問いに対して何らの回答も示唆も存在しない。だから、宮部はたんたんと話したんたんと行うのみであり、その内側や背景を読み取ろうとしてもなにもない。ただただ空白ばかりがある。そうじゃなくて、宮部が宮部たり得た理由が示唆されなきゃならんし、そうなって初めて最終的に宮部が特攻に臨んだ理由も説得力を持つんです。それがすっかり欠落しちゃってる。
一方、宮部本人ではなく、他の兵士たちの悲哀をこそ書こうとしているのだから、そこまでは考える必要はないという考えもあると思う。でも、描きたいのが他の兵員たちであるならばなおのこと、彼らが宮部になれなかったその訳を考えなくてはいけないし、だからその意味でも問いは極めて重要性なんですよ。
そんなこんなで、いちばん大事な核心部分が完全に看過されたまま話は進んでいくわけですから、小説として成立してないんちゃう?と。少なくとも致命的な欠陥だってことは間違いない。
もしそうと気づかずに看過したのなら作者はあまりにまぬけだし、気づいていながら看過したのなら不誠実にすぎる。僕らだってバカじゃないんだから、そういう手抜きとか不誠実とかはイラっとするわけですよ。読者なめんなよ!ってね。ナイトスクープは大好きなんで、そっちに集中してほしいとこです。

レビュー投稿日
2014年6月25日
読了日
2014年1月6日
本棚登録日
2014年1月7日
6
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