28歳の若さで武田家の指揮をとることとなった勝頼。信玄時代の老臣たちとのジェネレーションギャップに苦しみながら、偉大な父を超え、自分の思いを遂げようと進んでいく勝頼の姿が好意的に描かれる。
戦国最強軍団が、脆くも内部崩壊していく様子を、それぞれの心情とともに鮮明に表現、老臣の意見に心ならずも流されていく勝頼に歯痒く思う場面も多いが、勝頼の無念さが伝わってきて心が打たれる。
「なぜ、武田家は滅ばなければならなかったのか」と改めて考えさせらる。
著者は、武田信玄、武田勝頼、大久保長安の三部作を予定していたという。残念ながら大久保長安は実現していない。
著者晩年の作だけあって、実に読みやすい。有名な「武田信玄」より面白いかも。
章末には「信玄公記」や「甲陽軍艦」の引用が掲載されていて、原書ではほんの一行で表されている部分が、小説では背景描写・人物の心情描写等が重厚に表現されていることにも感動をおぼえた。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
時代小説
- 感想投稿日 : 2017年2月4日
- 読了日 : 1998年1月29日
- 本棚登録日 : 2017年1月29日
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