クレーヴの奥方 他2篇 (岩波文庫 赤 515-1)

3.41
  • (9)
  • (10)
  • (26)
  • (5)
  • (1)
本棚登録 : 191
レビュー : 17
コノハさん フランスの作家   読み終わった 

 どこかでフランス文学史を触った時に、比較的序盤で名前を見かけた本。歴史を辿る意味で読んでみた。

 1678年出版ということで、それは古いのか?と調べてみたところ、「フランス心理小説の伝統を創始した不朽の作品(ブリタニカ百科事典より)」らしく、最初の近代小説とも言われる『ドン・キホーテ』が同じ17世紀の小説であることも考えると、とんでもない古典だったみたい。海外の古典を読む際、年代がどうとかあまり考えなかったので、17世紀と言われてもぴんと来なかった。もう少し文学史について学んだ方が良いのかも。


 既婚者であり、母親から貞淑な妻としての心をしっかり教わった主人公クレーヴ夫人は、イケメン(?)で独身のヌムール公の求愛に心を惹かれてしまう。貞淑な妻としてヌムールを撥ねつけるか、あるいは恋心に忠実になってしまうか。不倫がどうとか言うよりも、自身の生き方について懊悩しているような印象を受けた。
 亡き母の影響あってか、彼女は最終的には貞淑な妻としての行動をとる。

「あたくしはそれ(自分の好きなものや自分を愛しているものに抵抗すること)はたいへん困難なことだということはよくわかっていますのよ。いくら道理ばかりたくさん考えても、自分の力はかえって信じられないのですから。クレーヴ殿のことを思って感じる義理というのも、あたくし自身の平穏な生活ということを考えているのでなければ、そんなに強いものではないのかもしれません。また、その平穏を求める心も義理に支えられていなければ、それだけではやはあり弱いものなんです」(p.290)

の箇所からは、「貞淑」という一見古臭くて保守的な言葉が隠し持つ力強さを感じるし、不義をはたらかないようにと、夫に自らの揺れる気持ちを告白する箇所からは、これまた「貞淑」のイメージと異なる残虐さを感じる。このエネルギーがものすごい。“他の男が好きになっちゃったけど、あなたに相応しい妻でいたい!”これはひどい。こんなもの読んだら恐ろしくて結婚できなくなりそうだ。

 現代と大きく異なる価値観を持つ古典を読む意味は、こういうところにあるのでは?と思える小説。普段は陰になっている場所にスポットライトを当ててもらったようだった。

レビュー投稿日
2014年10月8日
読了日
2014年10月8日
本棚登録日
2013年2月14日
0
ツイートする
このエントリーをはてなブックマークに追加

『クレーヴの奥方 他2篇 (岩波文庫 赤 ...』のレビューをもっとみる

『クレーヴの奥方 他2篇 (岩波文庫 赤 515-1)』のレビューへのコメント

まだコメントはありません。

コメントをする場合は、ログインしてください。

『クレーヴの奥方 他2篇 (岩波文庫 赤 515-1)』にコノハさんがつけたタグ

ツイートする