ロードサイド・クロス

  • 文藝春秋 (2010年10月28日発売)
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感想 : 123
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ジェフリー・ディーヴァーの新翻訳を毎年心待ちにしている。
今回はリンカーン・ライムシリーズ『ウォッチメイカー』で活躍したキャサリン・ダンスを主人公としたスピンオフ第2弾。
前作『スリーピング・ドール』から数週間たったころの話として、つながる部分も多々ある。
正直、登場人物に馴染みのあるリンカーンライムシリーズを読みたいけれど、ダンスものもさすがに飽きさせない面白さ。
幾重にも重ねられた裏返しの連続には、いつもながらの安心感のある心地よさ、そしてもちろん驚きも感じることができる。

あらすじ…
アメリカ・カリフォルニアのハイウェイ沿いに十字架が置かれていた。
追悼品のようでもあるが、この付近で交通事故が起こったことはないのに、なぜ…。
やがてそれは死を予告する十字架として知られるようになる。
一方かつて交通事故を起こして同級生を死なせたことから有名ブログで糾弾されたひとりの内気な男子高校生トラヴィス。
彼についての書き込みは過熱していく中、十字架の標的がブログで批判的な書き込みをした女子高生と見られ、「ロードサイド・クロス」事件はトラヴィスによる犯行ではないかと疑われ始めるが…。

事件を担当するキャサリン・ダンスはキネシクスの専門家。
キネシクスとは、人の仕草、言葉の選び方、声の調子などから分析して「相手の心を読むかのように」推理する科学。
得意のキネシクスを生かして、調査対象者らと駆け引きをするところはやはり見どころ。
そして、今作ではネット社会、ブログ、仮想世界を、事件の中心や鍵として配し、さらに作品中に表わされるURLアドレスは実際にアクセス可能という面白い仕掛けも用意されている。
容疑者と目されるトラヴィスの少年らしい一面と思うがけない一面や、ダンスの周辺の家族、捜査官、被害者など巻き込まれた人たち含め、登場人物像の細やかな描写も興味深い。
犯人については、そこまで凝ったことするのか…と半ばあきれにも似た気持ちにもなるが。

本国では2010年夏にリンカーンライムシリーズ9作目が発表されたそうで、こちらも楽しみ。

Rordside Crosses/Jeffery Deaver/2009

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 海外小説
感想投稿日 : 2011年7月28日
読了日 : 2011年7月22日
本棚登録日 : 2011年7月28日

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