平和主義者、理想主義者と謳われている著者が若き日に、東大紛争では加藤総長代行の補佐として活躍した場面の回想では、現実逃避で判断しない大河内総長、責任をとらない医学部関係者への怒り、歯に絹をかぶせない厳しい批判をしています。一方、法学部は決して権威主義の象徴ではないと著者が力説することが分かります。東大紛争開始から安田講堂落城、その後の経緯は詳細で、授業再開後、坂本氏の授業粉砕を叫ぶ全共闘学生に対し、果敢に挑み、8時半からの1時限に授業を移したというエピソードは笑えました。それにしても現実主義者と言われる高坂正堯氏との対談後の評価「この人は戦争の傷を身にしみて経験していない」は鋭く、橋本龍太郎首相の戦争責任の自覚を、遺骨収集と同レベルの話と捉えているとの指摘など、著者の中国への深い罪の負い目意識が一貫しています。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
政治
- 感想投稿日 : 2013年8月16日
- 読了日 : 2011年11月25日
- 本棚登録日 : 2013年8月16日
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