近代化と世間 私が見たヨーロッパと日本 (朝日文庫)

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  • 朝日新聞出版 (2014年11月7日発売)
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「世間」の中で生きている日本と、「世間」をもたない欧米人の差はどこから来たのか?社会society、個人Individualが日本語に訳出されて150年らしいが、日本では概念が確立していない!一方、西洋では12世紀から思想分野でのルネッサンスが始まり、900年を経てきたとのこと。漠然とした公共性である「世間」の中で生きている無責任体質の日本人の特徴は思い当たる。「世間」は大学が91年の文科省大綱化により大学が崩壊した!それを許している?!と舌鋒鋭い批判がそれを示している。キリスト教と天皇制の影響が明らかにあったのであろう。西洋では脱神話化とともに動物、自然、性などに関わる聖なる仕事が差別される対象になっていったという紹介がリアルで興味深い。結語に引用される12世紀の哲学者フーゴーの『ディスカリコン』の言葉が面白い。「故郷が甘美だと思うものはいまだ脆弱な者に過ぎない。どこに行っても故郷と同じだと思うものはすでに力強い人である。しかし全世界が流謫の地であると思うものこそ完全な人である」著者は親鸞の中にこの答えを見つけようとしたらしい。この「流謫の地」が「世間」であり、その中で生きるということが結論か。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本文化・比較文化
感想投稿日 : 2015年1月22日
読了日 : 2015年1月22日
本棚登録日 : 2015年1月20日

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