フジサンケイ・グループの祖であったという梟雄・鹿内信隆が北海道・留萌から出てきて戦後の混乱期から日経連・事務局に入り、財界の放送局というべきニッポン放送を立ち上げ、フジテレビ設立、そして経営破綻した水野成夫の産経新聞を買収し、現在のグループを作っていった歴史は凄まじいという言葉と、ホリエモン・三木谷たちが同じ轍を歩んでいるに他ならないことを示しています。また反共・右派を売り物にする産経新聞とドタバタ喜劇路線のフジの産まれた背景も良く理解できるように思いました。信隆が死に臨んで養子・宏明を後継者に指名し、鹿内王国の安泰を確実にしながら、妻・英子の疑心から崩壊していく様子も迫力があります。産経⇒フジ⇒ニッポン放送という親子関係を遡って宏明を4日間で追放していくまでのクーデターの著述は小説をはるかに上回る面白さで一気に読んでしまいます。鹿内春雄未亡人の頼近美津子も義弟・宏明に財産を巡って提訴したというのですから幻滅ですね。箱根の森、上野、美ヶ原高原美術館が全て、鹿内信隆の美術オタクから来ていたというのも、複雑な心境です。今春のフジ・ライブドアの争い、そして今秋のTBS・楽天の争いの背景、また未来を予感させる実にタイムリーな読み物でした。しかし、鹿内一族をはじめ、産経OBの司馬遼太郎が鹿内宏明を口を極めて罵ったことといい、財界の鮎川義介・植村甲午郎・櫻田武、水野成夫、フジの日枝久、羽佐間重彰、興銀の中山素平も全て出てくる人達が腹黒、または小人物になってしまい、面白いとはいえ、かなり暗い本かも知れません。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
ノンフィクション
- 感想投稿日 : 2013年8月24日
- 読了日 : 2005年11月3日
- 本棚登録日 : 2013年8月24日
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