宮本輝が28歳で会社勤めをやめ、「泥の河」で太宰治賞、「蛍川」で芥川賞を受賞するまでのサクセス・ストーリーが大変興味深かったです。神経症気味の青年が小説家を目指して会社を退職したということに周りの人々が驚いたことも肯けますが、かなり特異な例なのでしょうね。宮本を支えた資産家、淀競馬場に親子で凧揚げに行っていた際に出会った縁で祝電を打ってきてくれた会社時代の同僚、同じく祝電を打ってきた荒正人への欠礼の話が印象に残ります。宮本が桃山学院大卒業でながら素晴らしい文章を書いていることのギャップが不思議だったのですが、酒と小説にあけくれた若い日の自伝的文章を読むと謎が解けたように思いました。やはり破天荒な生活をしていた父の思い出も面白いですが、幼年時代に富山に流れた記事を読んで蛍川の背景も頷けたように思います。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
日本文学
- 感想投稿日 : 2013年8月24日
- 読了日 : 2005年12月7日
- 本棚登録日 : 2013年8月24日
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