物語は昭和10年、10歳の少女から始まる。最果ての地・根室を舞台とした女性ミサエの一代記、そしてその子・雄介の大学卒業までの半生。あまりにも過酷な人生で読むのが辛かったが、冒頭1ページから曳きこまれる圧倒的な筆の迫力!その中で出会った親切な人々が救いではあるが、この人たちとのその後の交流がないことが更に孤独感を強めているように感じた。ミサエの健気な若い日、そして子どもが生まれてからの強い逞しい姿が別人のようでありながら、不幸はどこまでも続く。この推理小説のような書名は、悲惨な人生を象徴する。ミサエだけではない、雄介の義母ハナもまた辛い人生。重要人物である住職の妻ユリが雄介に説明する言葉として解き明かされる。昭和48年に短い言葉を交わすだけに終わったミサエと雄介の邂逅も、またミサエの孤独の深さを感じさせられた。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2023年1月10日
- 読了日 : 2023年1月9日
- 本棚登録日 : 2023年1月1日
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