【感想】
多くのエッセイがまとめられたエッセイ集であるため、要約は割愛します。

400ページ以上ありますが、内容はユーモアに富み、スイスイと読み進められる。

著者のヤン・デンマンは実在するのか、しないのか。
著述内容から推測すると70代〜90代??のオランダ人特派員記者だと思われますが、その行動力や、物事に対する思考、時事への捉え方を考えると、おそらく実在はせず、ヤン・デンマンを演出する集団がヤン・デンマンを演じつつ、様々な意見を著述しているのではないか、と推察します。

書かれている内容は日本の経済、政治、文化(アングラも含め)、国際関係、教育などなど多岐にわたり、一概にこういう本、と書くのは困難。
ただ1つ1つのことに気付きが多く、外国記者や関係者との軽妙なやりとりに、今の日本のイメージ像がぼんやりと捉えられます。

この本を読んで、外国人から見た日本像と捉えるのは危険です。
なぜなら本当に著者が外国人なのかが分からないため。
ただ、著者含めて登場する記者たちや部下など(本当にいるのならば)の発言から得られる圧倒的な情報量とそれへの解釈は、今まで考えたことのない視点を与えてくれ、大きな刺激となります。

皮肉とユーモアに満ちた知識本(ただし全てが正しいものとは限りません)として、一読をお勧めします。

難点としては、あまりにも情報量が多いため、他の本と読み比べして検証し、自分の考えの糧とするには時間と体力を大きく割く必要があること。エッセイだから仕方ありませんが、1つ1つの事柄について出典元などを細かく記載してもらえると嬉しかった。ただし、出典の記載も膨大になるでしょうし、出典ではない個人の考えがほとんどであるため、出典元の記載があったとしても役立つかどうかは不明ですが。

物の見方が一辺倒になっているな、と感じたら読み返したい一冊です。

2019年5月4日

〈要約読み〉
グローバル化する世界状況を無視して生きることはできない。マスメディアによる海外へに向けたイメージ形成戦略は重要であり日本も戦略的に情報発信する必要がある。国際経済活動、安全保障の観点から優位に立つためにもまずは世界の鏡に映った海外からの日本のイメージを正確に認識するべきだ。


〈感想〉
海外の人たちが日本をどのように見ているか。
それをテーマに読書を進める中で、世界各国の日本の報じられ方がまとめられた本書はとても良書だと思います。

寄稿集のため、感想は散漫としてます。。

日本が経済的にも安全保障の面でも世界の中で優位に立つため(もしくはいつのまにか悪者にされないため)の戦略としてマスメディアによるイメージ形成、情報発信が必要。そのために現状把握のためのレポートを各章の著者が独自の分析、見解を踏まえて著述されています。

この当時の日本は日本脅威論、日本異質論の高まりがバブル崩壊において収束し、日本は斜陽の時代の真っ只中。その日本が海外からどのような評価を受けているのかが、政治面、経済面、文化面から見えてきます。

読んでいて思ったことは、
アメリカは割とステレオタイプなアメリカ像。その立ち位置で日本のことを見ている。アメリカはやはりアメリカ。アメリカ as No. 1 ですね。
意外に思ったのはヨーロッパ各国。どの国も日本に対しての批判的な記事が多い。
イギリスでは第二次世界対戦の頃の日本がイギリスに対して行ったことが今でも取り上げられる。
これについては大英帝国としてあなた達は世界に対してこれまでどれだけのことをしてきたと思っているのか、反論もしたくなります。
ドイツについては日本のことを悪し様に書くことが、日本のニの轍を踏みつつある自国に対する反面教師として扱われている。私のイメージでは、ドイツと日本人は勤勉、実直という面で親近感に近いものがあると思っていましたが、メディアの扱われ方が意外すぎて驚き。

アラブ世界については、日本に対しての興味はほぼなし。よく考えると当然ですが、原爆を落とされた広島の捉え方が、日本の意図とは真逆であり、かつ事実と異なることを事実として発信してしまうということに対して、かなりの疑問に感じられました。

欧米各国、アラブについて共通することは、やはりバブル時と比べて日本に関する報道が目に見えて減っており、代わりに中国に関する報道が増えていること。つまり、経済の失墜とともに他国から興味が薄れており、日本から適切な情報発信ができていないがために、異質論の残滓がネタとして顔を出すような状況です。

東アジアの中国、韓国については、もともと抱いていたイメージ通りでしょうか。
特に韓国については、この当時の状況ですら両国の根本的な関係改善には絶望します。今現在の状況を考えると、悪化の一途ですね。

この当時の状況から、日本は戦略的にどのような発信をしてきて今に至るのでしょうか。
日本の観光客は飛躍的に伸びています。ということは当然プラスに働くことを発信し、奏功しているということでしょう。
それが国際経済、安全保障の面でどのように影響しているのか。改めていろいろ調べたくなりました。

★5としたいところですが、日本とも関係の深い国々が並ぶ東南アジアについてのレポートがなかった。その点において★を1つ減らしました。
東南アジア、アフリカの報道状況もレポートされていたら★5でした。

この本が刊行されたのは、このレビューを書いている現在から15年前。他の方も書かれていますが、こういった本は一定の期間ごとに発刊されてほしい。せめて10年ごとに世界各国の日本に対する報道内容を知りたいと思います。

2019年2月16日

ネタバレ
読書状況 読み終わった [2019年2月16日]
カテゴリ 国際関係

〈要約〉
訪日外国人数は近年急激に増加しており、政府は高い目標を設定してるが外部要因による影響を大きく受けやすい。リスクヘッジの為にも、外国人が体験したいと考えていることと日本人が体験して欲しいことのギャップを念頭に歴史を学び分析し、きめ細やかなマーケティングを行うことが欠かせない。


〈感想〉
「観光」という観点から日本の近現代史を俯瞰した「歴史の教科書」です。

幕末から現代に至るまでの外国人から見た日本、興味がある日本と、それを受けて日本の観光に対しての意識がどのように変遷してきたのかが分かりやすく書かれています。

最終章では、更なる外国人観光客の増加を見込む日本に対しての、著者からの課題提案で締めくくられます。

これまで学校で学んできた歴史とは全く違う観点から語られる外国人と日本の関わり方の話はどれも興味深く、多種多様な文献や、詳細なデータを列挙した解説は信頼できるものでした。

並行して読んでいた「日本はどう報じられているか」において、国際関係における経済、安全保障のために、海外に向けた戦略的な情報発信を行う必要性が説かれていましたが、まさに観光もその一翼を担う事業と言えるのではないでしょうか。
観光とは単なる娯楽ではなく、国にとってすれば外貨獲得の重要な手段であり、その国をイメージ付ける戦略として考えるべきことなのでしょう。

バブル期に日本が外国(主にアメリカ)との経済摩擦を考慮して訪日外国人誘致に消極的になったタイミングと、バブル崩壊後に起きた日本のイメージ低下(日本異質論の残滓)は無関係とは思えないのです。

政府は外国人観光客の更なる増加を目標にしています。
幕末から「外国人が見たいもの」と「日本人が見せたいもの」には大きなギャップが連綿として続き、その理由として根本的な徹マーケティングの不足を挙げ、これが水モノである観光産業のリスクヘッジにつながることを説いています。

昔、地方へ税金をばら撒いた結果、日本各地にくだらない建造物が乱立し、当然のごとく無駄遣いに終わりました。当然地方としては県外からの来客数増のために行ったことでしょうが、何も考えず、見せたいものを作ろう考えよう、の結果です。

斜めに見たことを書きますが、よくある広告屋のように、「おれたちが流行を作る」という奢った考え方ではなく、今求められているものを丁寧に分析して現状を把握し、ニーズとトレンドに沿ったPRを油断することなく行って行くことが大事なのでしょう。

この本の主題とはズレますが、ミクロに考えると、これは人とのコミュニケーションにおいても同じことが言えるな、と読みながら思った次第です。

多くの面で新たな視点を与えてくれる良書でした。

2019年2月17日

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〈要約〉
日本はアメリカによって指導された自虐的な教育によって、アジア各国に恨まれていると考え自国を誇れない人達が多いが、現実ではアジア各国から敬愛されている。日本は真面目で誠実で信頼される国なのだ。自虐史観を捨て、自分たちの国と文化に誇りを持つべきだ。

〈感想〉
アジアを中心にボランティア活動をしている著者が、海外の人たちと触れることで感じた「アジアの国々から見た日本」をまとめたエッセイ集です。
エッセイをまとめたものなので、多少の文脈の揺らぎは仕方ないにしても、文章はやや散漫的。「この話、他のところでもしてなかった?」「この話って、この章のテーマに合ってる?」というところが体系的に読むに当たっては少しわかりづらくありました。

内容としては、なかなか聞くことができないアジアの方々の日本に対する耳のいい生の声を知ることができる、その点についてはとても素晴らしい内容でした。第二次世界大戦以前から現代までに日本がアジアの国々に対して行なっている様々な支援活動においてアジア各国から非常に感謝されているという話は、著者の狙い通り日本を誇りに思う気持ちが高まってきます。他の方も書いていますが、パラオのペリリュー島のお話や、2つの位牌を持って昭和天皇と対面した女の子のお話では泣きました。。

ただし、著者は己の信念のもと行動しているある意味とても素直で正直な方なので、好意的に思っていないものに対しては下品な表現、偏りが多々見られます。

著者は沖縄で生まれ育ち、アメリカからの理不尽な差別を多々受け、且つ、いわゆる自虐史観が強い教育により日本人としてのアイデンティティに悩んでいました。その後、ボランティア活動においてのアジアの人々との交流によって日本が感謝されていることを知り、日本人としての自分に誇りを持っていった。そうした実体験を元に、読者に対して、「日本人は日本にもっと自信を持っていいんだよ、誇りを持っていいんだよ」と啓蒙しています。

著者の意図としては、
1.自虐史観に学ばされる日本人は日本に誇りを持てず悩んでいる
2.実はアジアの各国から日本はこんなに賞賛されている
3.だから日本人は誇りを持つべき
4.そのため日本はこうあるべき
というストーリーで啓蒙を行っていきます。
そこに著者の思想としての愛国が散りばめられるため、特に4においてはかなり右寄りに偏った内容(天皇崇拝や軍隊保持)になっていると感じました。その意味では、外国の方から見た日本の姿を知りたいと思って本書を手に取る方は、本書の内容全てを鵜呑みにするとかなり思想が偏ります。「右寄り、右翼的」という表現の疑義(保守=右翼なのか?)については著者が本書内で触れています。その内容に私は肯定的ですが、取り上げる題材とその裏に見える著者の思想に偏りを強く感じるため、敢えて右寄りと表現しました。「日本人の誇り・アイデンティティ」をテーマにすると天皇や自衛隊に対して触れざるを得ないのかもしれませんので、批判するつもりもありません。

残念なのは、日本人の誇りを取り戻すために書かれたはずの文章なのに特定の国に対して侮蔑的な表現がなされていることです。昨今の世界情勢に対して色々言いたいことがあるのはわかります。だからといって相手を貶めて良い訳ではありません。相手がこちらを貶めたとしても同じ土俵に乗ってしまうのであれば第三者からは同じ目線で見られるだけです。
あくまでも公平に冷静に客観的に物事を判断し、淡々と行動すべきことを行動すべきで、「日本に誇りを持つ日本人」を増やすために感情的な表現を使っているのであれば、その「誇り」とはその程度のものなのか、と考えざるをえません。ただし、著者は政治家でもなく学者でもない一般人ではあるので、そういった人が書く分には市井の1人の一意見として参考になります。
著者の...

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2019年1月25日

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読書状況 読み終わった [2019年1月25日]
カテゴリ 国際関係
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