新装版 マックスウェルの悪魔―確率から物理学へ (ブルーバックス)

著者 :
  • 講談社 (2002年9月20日発売)
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本棚登録 : 678
感想 : 60
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初版は中学生の頃に読んだ記憶があります。図書館にブルーバックスのコーナーがあり、同じく都築卓司さん著者の「タイムマシンの話」と並んで置かれていました。どちらも導入部は面白かったと記憶していますが、途中から専門的な話となり、投げ出してしまいました。

40年以上経ち、今回再読してみましたが、面白かったです。
本書は熱力学の第2法則を豊富な寓話を使ってわかりやすく説明します。数あるブルーバックスの中でも、巻末にあるブルーバックス発刊の趣旨に最も近い本と思います。
感覚的に理解するのが面倒な第2法則を「分離の状態は、やがて混合という結果に追い込まれることを述べたもの」と「追い込まれる」という言葉を使って説明するなど、職人的教授という気がしました。

面白かったのは、空気が積もらない話。

「①空気分子はできるだけ位置エネルギーを小さくしたい。そのために地上につもってしまうのが最上の策である。
②たくさんの粒子からできている体系は、実現の確率の最も大きな状態になろうとしている。このためには、空気分子は非常に薄く、同じような密度で遥か上空にまで広がるのが得策である」
そして著者は「両法則の顔をたて」、空気は下に濃く、上に薄く分布すると説明します。

本書のすごいのは、「マックスウェルの悪魔」という分子を自由に操ることのできる悪魔を登場させ、分子移動の不可逆性を寓話として理解させようとすること。また、これまた理解が難しいエントロピーを金属とゴムの収縮の違いを例にとって説明し、読者に何となく理解した気にさせてしまうこと。40年前、完読しなかったのが悔やまれます。

なお、エントロピーを理解しても、日常生活に役に立たつことはないと思います。それでも、読書の楽しさを十分に味わえるおすすめの★★★★★。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 科学
感想投稿日 : 2017年8月3日
読了日 : 2017年8月3日
本棚登録日 : 2017年8月3日

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