江戸開城 (新潮文庫)

  • 新潮社 (1987年11月26日発売)
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本棚登録 : 147
感想 : 12
3

殺戮に明け暮れた明治維新の中で江戸無血開城は奇跡のような出来事です。大村益次郎を主人公にした「花神」は、江戸開城について少ししか触れていません。江戸開城は勝海舟と西郷隆盛の大芝居みたいな出来事なので、それは仕方ないですね。

本書は西郷隆盛が大久保利通に送った1通の手紙から始まります。手紙の中で西郷は、最後の将軍、徳川慶喜に関して「ぜひ切腹にまで参らなければ相済まない」と力説。徳川幕府から王政への復古が革命であるならば、「革命にはある程度の血の祭典が必要」だったと筆者の海音寺潮五郎は、西郷の力説の背景を考察します。
一方、幕府側の勝海舟は「札付きの平和主義者」。アジアに対する列強の脅威を説きながら、内戦回避に向け、懸命に官軍側との交渉を行います。

幕末の動乱の中で西郷と勝が江戸無血開城に向けて、ギリギリのやりとりが、豊富な資料をもとに描かれます。戦闘なのか恭順なのか優順不断な慶喜の態度、それにやきもきする勝の苦悩、勝と西郷の信頼関係、江戸城引き渡し直前の緊張感が読みどころでしょうか。

ただ、書状や日記が頻繁に登場されますが、読みづらいです。また、人名が同一人物であってもときどき変わるので、混乱します。書状の中で義邦という人物が登場しますが、これが勝海舟と判るまで時間が掛かりました。

本書は彰義隊の壊滅まで描かれます。しかし、この場面は大村益次郎を主人公にした「花神」の方が遥かに面白かったです。それでも、江戸開城のギリギリの舞台裏は緊張感があります。明治維新ファンの方は必読でしょう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 時代小説
感想投稿日 : 2020年7月11日
読了日 : 2020年7月11日
本棚登録日 : 2020年7月11日

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