人質の朗読会 (中公文庫)

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本棚登録 : 61
レビュー : 4
著者 :
korisu3964さん 国内小説   読み終わった 

久米宏の「ラジオなんですけど」で紹介された本。それだけの理由で読み始めたが、素晴らしい短編集だった。小説を読んでいる間、幸福な気持ちになれた。そんな小説は稀有である。

中南米の某国で8人の日本人旅行者と添乗員がゲリラ組織の人質になる。人質救出のため、軍隊が突入。しかし、9人とも死んでしまう。
事件のあと、ある録音テープが発見される。そこには、人質たちがそれぞれに綴った物語が朗読されていた。
「朗読の合間 、彼らは実によく笑っている 。涙ぐむ場面があったとしても 、それは絶望からではなく 、生きている実感からにじみ出てくる涙であったことが 、テ ープからはうかがえる 」

綴られた物語は9編。7編は旅行者、1編は添乗員、そして最後の1編は朗読会を盗聴していた特殊部隊通信班の軍人が綴ったもの。
もちろん、最後の軍人は日本語を解さない。しかし、彼が感じたのは
「めくる音 、咳払い 、そして拍手 。私はあんなにも慎み深い拍手を 、それ以前も以降も耳にしたことがない 。華やかさや興奮とは無縁の 、遠慮がちで 、今にも消え入りそうな 、しかしこれから語られる物語への敬服の念に満ちあふれた拍手だった 」。

勝手な解釈だが、9編とも少し不思議な、しかし、誰かに話したくなるような心地よい経験談。そして、読み終わるたびに何かしらの爽快感というか、充実感みたいなものが得られる。
もっとも気に入ったのは「山びこビスケット」。短編集を読了した直後、この1編は再読してしまった。

星がいくつあっても足りない本。母国語が日本語で幸せと思った。

レビュー投稿日
2015年1月31日
読了日
2015年1月31日
本棚登録日
2015年1月31日
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