読書の技術について書かれた楽しいエッセイ集。
セレンディピティ ( s e r e n d i p i t y )とは、思いがけないことを発見する能力を指す。著書の外山滋比古さんは乱読によって、精読では出現し得なかった残像が思考経路に現れ、以前からあった記憶と科学反応を起こし、新しいアイデアが生まれるとする。
知識を詰め込んでも知的メタボリックにしかならず、新しい価値は生まれては来ないというのが、本書の趣旨。
「読書がいけないのではない 。読書 、大いに結構だが 、生きる力に結びつかなくてはいけない 。新しい文化を創り出す志を失った教養では 、不毛である 」。
外山さんは、乱読を勧め、自分の専門以外の様々なジャンルの本を読み、本は自らのお金で買い、途中で投げ出してしまった本も無駄ではないと断言する。
「乱読の本では 、よくわからないところが多い 。本の内容が 、そのまま物理的に読者の頭の中へ入るということはまずない 。わからないから 、途中で放り出すかもしれないが 、不思議なことに 、読みすてた本はいつまでも心に残る」。
個人的なことを言えば、だいたい軽めのノンフィクション、少し難しめのノンフィクション、そして小説の3冊を同時に読んでいる。インドネシアにいて、本が手に入らない状況が15年以上続いたせいか、乱読には若干抵抗がある。したがい、この本に完全に賛同はできないが、それでも、この本は面白い。乱読を勧めてはいるが、極端な速読には論外としている。
「十分間で一冊読み上げる法などを言いふらしている向きもある 。そんな本なら 、いっそ読まない方が世話がない 、とは考えないところが 、かわいい 」という意見は痛快。
母親の婦人雑誌を盗み読みした経験など、面白いエピソードも多く、楽しい本。自分の読書法について考えるきっかけにもなり、読んで損はない★4つ。
- 感想投稿日 : 2015年7月2日
- 読了日 : 2015年7月2日
- 本棚登録日 : 2015年7月2日
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