星やどりの声

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本棚登録 : 1602
レビュー : 300
著者 :
koshoujiさん 朝井 リョウ   読み終わった 

何故かこの本、それほど古いものでもないのに所々でページの紙がしわしわになっている。
とりわけ、最後に近づくにつれて、それが激しい。
水分でも付着したせいだろうか。
一度くっついてから、はがれたような跡が残っている。
雨に濡れたか、雪でも付いたか。
いずれにせよ図書館の本なのだから丁寧に扱わないといけないのに、と誰か分からぬ借り手に少し憤りを覚えた。
だが違った。
紙が濡れたのは、そんなことではなかったのだと、後に知ることになる……。

星やどり──なんと素晴らしいネーミングセンスだろう。
「雨やどり」ならぬ「星やどり」。

亡くなった父親が秘かな思いを込めて改築し、命名した喫茶店「星やどり」。
そこには天窓があり、夜になれば星がいつでも見える。
家族は男三人、女三人の六人兄弟と母親。
長女の琴美。
長男の光彦。
二女の小春。
ニ男の凌馬。
三女のるり。
三男の真歩。
それぞれ魅力的なキャラを持ち、その異なった個性を活かしながら、みんな自分なりの生き方を選んでいる。
物語の後半、「星やどり」の本当の意味が明らかになる。
ようやく、ぼくは気付いた。
そのあたりから、この本の紙がしわしわになりつつあるのを。
それは結末に向かうにつれ、頻度が高くなっていく。
そうか、これは雪や雨に濡れたのではない。涙の跡なのだと。
自分自身も、目頭が熱くなり、涙が零れそうになったから分かったのだ。
この本を読んだ人たちが思わず感動の涙をこぼしたが故にできたしわの跡なのだと。
それほど、このストーリーは結末に向かって、ほろりとさせる素敵な話だ。
湯気の立ち上るビーフシチューの甘い香りが、行間から匂い立ってきそうな温かい物語。
まさに、朝井リョウ君の真骨頂。
文庫化されたら購入し、是非手元に置いておきたい作品です。

レビュー投稿日
2013年3月8日
読了日
2013年2月19日
本棚登録日
2013年2月19日
13
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