スロウハイツの神様(上) (講談社文庫)

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本棚登録 : 10459
レビュー : 861
著者 :
koshoujiさん 辻村 深月   読み終わった 

敢えて再び
最も私を感動させてくれたこの作品のレビュー欄に続きを書きこもう。

辻村深月「鍵のない夢を見る」にて「直木賞」受賞後の雑感:その2
(前編は下記に)
http://booklog.jp/users/koshouji/archives/1/4062758229

辻村さんは、今後どちらの路線の小説を中心に書いていくのだろうか……。

直木賞受賞作品なので購入して読んだという方々のレビューを色々なところで拝見した。
予想通り、「鍵のない夢を見る」の評判はあまり良くない。
多かったのが、「心理描写はすごいが、読後感が悪い」というもの。
やはりなあ、というのが正直な気持ちだ。
その方たちに伝えてあげたい。
断言するが、辻村深月作品の魅力は、けしてそこにあるのではない、と。

「鍵のない夢を見る」について、ある方のレビューを別のサイトで読んだのだが、
”今回は誰にも共感や同情する間も無く、全てのお話があっけなく終わってしまいました。
彼女の持ち味であるイタさや不快さがもの足りなくて。辻村ワールドが味わえなかった”
と書かれていて驚いた。
「オーダーメイド殺人クラブ」や「水底フェスタ」など、最近の彼女の作品を読んだ方は、彼女の持ち味を”イタさ”や”不快さ”と思うのか……と愕然とした。
「スロウハイツの神様」「名前探しの放課後」「ロードムービー」「凍りのくじら」などの講談社路線を読み続けてきた読者とは、彼女の小説に向き合う感覚が全く異なってしまうのだ。
講談社路線を読んだ人は、彼女の持ち味が”イタさ”や”不快さ”などだとは頭の片隅にも浮かばないだろう。
もちろん私も、彼女の持ち味が“イタさ”や“不快さ”であるなどとは夢にも思ったことはない。

*「闇が深ければ深いほど、そこに射し込む光は柔らかく温かいはず」と彼女は断言していたのだから。「これからも気取ることなくハッピーエンドを提示していきたい」と語っていたのだから。
(*:「野生時代 2009年8月号の『辻村深月インタビュー』より」
だからこそ、それを見事に表現した「スロウハイツの神様」や「名前探しの放課後」に感動し、私は感涙したのだから。

よもや彼女はこのまま『文藝春秋路線』の作風に向かってしまうのではあるまい。
彼女を貶めるつもりは毛頭ないが、だとしたらそれは一ファンとしてとても哀しいことである。
そんなことをふと思うのは私だけの勝手なワガママでしょうか?

註:ちなみに、来週7月28日のTBS「王様のブランチ」に辻村深月さんが出演するらしいので、何を語るのかよく聞いてみたいと思っています。

レビュー投稿日
2012年7月22日
読了日
2011年12月8日
本棚登録日
2012年7月22日
8
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『スロウハイツの神様(上) (講談社文庫)』のレビューへのコメント

sat00oooさん (2012年7月26日)

こんにちは。1のほうもあわせて、大変興味深く読ませていただきました。私も同じ考えで、やはり辻村さんは登場人物ひとりひとりの環境や心理描写を残酷なほどに深く丁寧に描いている、というところが好きでずっと読んでいたので、短編集での受賞というところはちょっと残念です。かといって辻村さんらしい長編はちょっと直木賞だし読んでみようかなという気持ちでは手に取りづらく販促もしづらいというのもよく理解できますが…。最近は(直木賞を意識してなのかどうなのかはわかりませんが)中編くらいの作品が多かったので、のびのびと講談社ノベルス2段組み上中下!くらいの辻村さんらしい作品が読みたいですね!

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