わたし、定時で帰ります。 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2019年1月29日発売)
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「わたし、定時どころか日本に帰れません。」

この本は病院かどこかでちょっと読んだ記憶があるだけ。テレビドラマが結構面白く、この春のドラマで唯一毎週見ている。で、このタイトルに無理矢理かこつけて、3月にスペインに行ったとき、バルセロナとマドリードで2大ハプニングがあったので、そのバルセロナでのお話です。
すなわち、この本のレビューではありません(笑)。申し訳ない。<(_ _)>

恐怖のスペイン旅行 バルセロナ編「グエル公園で財布が消えた!!」

前日にマドリード駅列車乗り遅れ事件があった、実質的なバルセロナ最終日。
その日は朝9時から今回の旅のメインイベントであるサグラダ・ファミリア見学である。

相変わらずの青空の下、地下鉄を乗り継ぎ8時半に到着。
中にはまだ入れなかったが、その外観の迫力に圧倒され、写真を撮りまくった。こんな荘厳な建物を綿密な計算のもとに建てたアントニオ・ガウディという人物。

9時になると開門され、サファードから中に入る。
中の聖堂の美しさに息を呑んだ。外観も凄かったが、中はそれを凌駕していた。これほど美しい建物を見たのは生まれて初めてかもしれない。ガウディの神髄を見た気がした。

エレベーターで「受難の塔」に上る。
まだ建築中の塔の上でいったん外に出てから、螺旋階段を降りていく。再び聖堂に戻り、その美しさに見惚れたくさん写真を撮った。裏側には多くの彫刻があり、聖書に出てくる様々な場面を切り取ったその彫刻もまた圧巻だった。

2時間以上サグラダ・ファミリアを堪能し、地下鉄で次の世界遺産「サンパウ病院」へ。
この病院の敷地が広過ぎてかなり歩かされた。昼食時でもあり、近くに手頃なカフェがあったので、休憩も兼ねてそこでパンとカフェを注文。

前日もマドリード駅を走り回り2万5千歩。
その日もすでにその時間で1万歩は歩いていたはず。疲労が極限に達していた。予定では地下鉄で次の世界遺産「グエル公園」に行くつもりだったが、歩き疲れたのでタクシーで行くことに。

スペインは殆どカード支払いなので、それまで現金をあまり使わなかった。財布の中を確認すると、朝のままの状態で20ユーロ紙幣が2枚。小銭入れには8ユーロ程度。

硬貨を使い切りたかったので、8ユーロで納まらんかなあ、と思っていた。※このつまらない考えが、後の最大の悲劇を引き起こす原因となる。小銭入れから硬貨をじゃらじゃらと取りだし、実際に何ユーロあるのか数えていた。

数えている間にタクシーがグエル公園に着く。
料金は10ユーロを少し超えた程度。小銭では足りない。仕方なく小銭入れを左のポケットに戻し、右のポケットから再び財布を取り出す。ここでまた悩んだ。20ユーロ紙幣で払うべきか、カードで払うか、どうしようと。

もう殆ど現金を使うところはないとは思いながら、明朝の空港行きのバスや朝食などでは必要になるかもしれない。一度は20ユーロ紙幣を取り出したが財布に戻し、カードで支払う旨を運転手に告げる。決済機にカードを自分で差し込み、暗証番号を入力する。

ちなみにスペインは殆どこのスタイルで、カードを相手に渡すという事はしない。店の人間でも信じきれないからだろう。全て自分ひとりで行う。こんなところでも日本の治安の良さというのを再認識できる。

この頃、すでに疲労で頭が働かなくなっていた。抜いたカードを手に持ったまま、狭い後部座席をずるずると横に移動しながらタクシーを降りた。目の前にはグエル公園が見える。

降りてすぐ右ポケットを探る。
あれ、財布が入っていない? ん? どこにいった?? ジャケット、ベスト、ズボンの前ポケット、後ろポケットを探すがどこにもない!!!!!!

持っているのは、タクシー代を支払ったカードと小銭だけ。頭が真っ白になった。降りた辺りに落ちてないかと必死に探すが見当たらない。I was at a loss.

近くに警官がいたので、「財布を無くしたんだけど」と懇願した。しかしながら「この辺りはスリが多いからね」と突っ放すようなお返事。

財布の中には紙幣以外にも別のカードを3枚入れていた。※ホテルのセキュリティボックスにも、念のためカードを2枚置いて来た。

現金は40ユーロだけだからまだ良いが、カード使ってキャッシングされたらどうしようとか、買い物に使われたらどうしようとか、マフィアとかに回って後で莫大な請求が来たらどうしよう(笑)と不安になった。

カード会社に盗難紛失の電話を掛けようかと思ったが、無くなったカードの緊急連絡先が分からない。
もう残りの観光どころではなく、大使館にでも行かなきゃだめか、と思った。悩んでも仕方がないので、気もそぞろに折角「グエル公園」に来たのだからと外から写真を3枚ほどとりあえず撮った。

さあ、どうする??
ここで一つ助かったのは、前日に地下鉄に10回分乗ることができる「T-10」という切符(写真参照)を購入し持っていたこと。とりあえずホテルに帰ってじっくり考えることにした。

堅苦しいのでここから文体を代えます(笑)。

地下鉄の乗り場を探しましたが、タクシーで来たため、場所が全く分かりません。「るるぶ」の地図やスマホのグーグルマップも見ましたが、そんなことに集中していると本当にスリにあい、1枚だけ持っているカードやパスポート取られたら恐いよなあ、と思いました。

さらっと見てから、こっちの方角のはずと思い、歩き出しました。ただし、東京でも仙台でもそうですが、地下鉄の入り口ってそう簡単には地上では分かりませんよね。少し歩いて見つからないので、通りを歩いてきた若い女性に地下鉄の駅を尋ねました。

その方は親切丁寧に教えてくれましたが、なんせこちらはバルセロナなんて全く土地勘のない場所を歩いているのだから、なかなか辿り着きません。このまま治安の悪い地区に入っていったらどうしようとさらに不安になりました。

そこで目に留まったのが道端にあったATM。
カードでタクシーに乗って帰ればいいじゃん、と思う方もいるでしょうが、1万円近くかかりそうなので勿体ない。こういうところで変にセコイ私が情けない。前日も列車に乗り遅れて1万円以上無駄なお金使っているからさ。

さらには、全てのタクシーがカードOKなのかどうか分からないので、現金を持っていれば安心だろうと考えたわけです。

ところがところが、そのATM。
カードを入れても、うんともすんとも言わないのです。さらにはキャンセルボタンを押しても入れたカードが出てこない……。脂汗がでました。ここでたった1枚のクレジットカードまでなくなったら、1000円足らずの小銭しか持っていない私は、哀れバルセロナの藻屑と化すのかと。

ガチャガチャ色々なボタンを押しまくった挙句、何とかカードだけは出て来ました。もう怖くてATMを使うのはやめました。再び歩き出し、(20分以上うろうろ歩いたかなあ)サグラダ・ファミリアの近くに戻って来たのを感じました。ようやく地下鉄の駅の入り口が見つかりました。

唯一の命綱である地下鉄チケットは無事に改札を通り、ナンチャラ線とナンチャラ線を乗り継いで、ホテルに近い駅まで辿り着きました。

この時は、「スペインなんか来るんじゃなかった」とまで思いましたね。で、ホテル到着。フロントのマネージャーに「財布を無くしたんだけど」と言おうとしたその時!!!!!

マネージャーが私に向かって笑みを浮かべているじゃありませんか。
その横にいた男性がこちらを振り向きました。うん?? どっかで見たような????

おおおおおお!!!! さっき乗ったタクシーの運転手!!!ぐわあああああああ!!!! 

フロントの女性が私に財布を見せました。「これは貴方のですか?」と言ったと思います、スペイン語で、たぶん。まさしく、彼女が手にしていたのは1時間ほど前まで私のポケットに入っていた黄色い財布。

タクシーの運転手に「ありがと、ありがと、君は神様だ!!」みたいなことを口走ったかと思います。地獄で仏とは、まさにこのこと。

頭が真っ白になったので忘れていましたが、その財布にホテルのカードキーも入れていました。それにはバルセロラバルホテルという名前とホテルの住所が書いてあるので、運転手は届けてくれたのです。

私は運転手に抱きつかんばかりに寄って行って、「兎に角お礼をしたい」と言ったかと思います。でも何故か運転手は健気に辞退するんですね。そそくさと帰ろうとする。私はとりあえず「とてもとてもとてもありがとう」とだけ言いました。

フロントの女性からは「you are very lucky」と言われました。
財布の中を確かめました。カードが3枚間違いなく入っています。ホテルのカードキーも。札入れのほうを見ました。えーと、20ユーロ札が2枚あるかな?? あれ、1枚しかない?? おかしいな。タクシーの支払いはカードだったし。

結局、運転手は20ユーロ札を1枚だけ抜いたのです。約2600円。まあ、グエル公園からホテルまでタクシーで帰ったら優にそれ以上かかるので、そのぐらい良いかと。

現金をあまり持ち歩かなかったのが正解だったようです。
50ユーロ札などはホテルのセキュリティボックスに置いていましたから。スペインは結構小さな店でもカード支払いが殆どなので、現金は最低限だけ持っていればいいやと思ったのが良かったです。50ユーロ入れていたらその札を抜かれていたでしょう。

とりあえず、歩き回って汗をかいたので部屋に戻り一息つきました。
予定がすっかり狂い、夕方近くなったので、まだ残っていたガウディの建築物を観に行くのはやめました。で、綺麗な海辺が見える近くのコロンブス像のあたりまで地下鉄でちょろっと行って夕陽の写真でも撮ろうかと。

地下鉄で海辺に着くと、超晴れ男の私にしては本当に珍しく雨が降り出しました。※ここ2年ぐらい、何かのイベントや旅行(数十回)で雨に会ったことは一度もないですからね。

でも、にわか雨ですぐに明るくなりました。
その後の夕陽と海辺のコントラストが綺麗でしたね。建物を見るのにも少し飽きていたので新鮮でした。財布を無くしたおかげで、逆にゆっくりとコロンブス像周辺の海と帆船、大型客船などの写真をたくさん撮りました。

これも私の日頃の行いが良いせいではないかと(笑)。何とか絶望の淵から這い上がり、その後はゆっくりと海辺のレストランでステーキなど食べました。

まあ、こんな感じで、私はジェットコースタームービーのようなバルセロナの1日を過ごしたわけです。
無事に日本に帰ることができて良かったと思います。本当にラッキーでした。フロントのお姉さんとその後も話しましたが「スペインで落し物が出てくることなんて滅多にないのよ」みたいなことを言っていました。

不屈の男である私は(笑)これに懲りずに、夏にはイタリアに行くことを決め、すでにミラノへの飛行機の予約も取りました。(^^) 今度は5泊8日です。ミラノ、ベネッィア、フィレンッエで、次はどんなハプニングが起こることやら、お楽しみに。<(_ _)>

※前日のマドリードでの列車乗り遅れハプニングは下記に書いていますので是非お読みいただければありがたく。<(_ _)> また、フォロワーの方でも他の方でも全く構いませんが、この文章の感想等のコメントを書いて頂ければうれしいです。
https://booklog.jp/users/koshouji/archives/1/4041294177

※スペイン旅行の写真はフォトムービーにしてYOUTUBEにアップしたので興味のある方は下記からどうぞ。<(_ _)>
https://www.youtube.com/watch?v=NohkSbiINGk

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ☆その他
感想投稿日 : 2019年6月2日
読了日 : 2019年6月2日
本棚登録日 : 2019年6月2日

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コメント 1件

杜のうさこさんのコメント
2019/06/07

センパ~イ、またまた返信が遅くなってしまって、申し訳ありません<(_ _)>
先日のコメントのすぐ後に、今度はなんとぎっくり腰になってしまいました!
椅子に座るのもままならず、あぁ、弱り目になんとやらです(>_<)
じっとしてると痛みもだいぶ楽になりました。
がっ!!このレビューで(あ、レビューじゃないんですね・うふふ)ドキドキハラハラ腰に響きまくりです(笑)
そして、カード紛失なんて笑い事ではないのに、ついくすくすと。(ごめんなさい)
でも、本当に良かったですね!!!
海外でお財布がもどってくるなんて、やっぱりセンパイは、持ってますね~!
やっぱり日ごろの行いでしょうか。

このところ、ネガティブワールドの住人と化していた私には、なによりのお薬です。
>読んで笑ってもらえることだけが、残り少ない人生での私の生きがいです(笑)。
いえいえ、センパイの業務連絡で楽しい時間を過ごさせていただけることが、同じく私にとっても生きがいです(*^-^*)

今度は、夏ですか!
5泊8日、うふふ、楽しみで仕方ありません♪

そう言えば、歌手・蘭ちゃん復活ですね。
ライブでは、キャンディーズ時代の歌もあるかもしれないと。
「アンティックドール」、聴きたいなぁ…。

楽しい旅行記をありがとうございました!

ではでは~(^^)/

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