禁断の魔術 ガリレオ8

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本棚登録 : 4812
レビュー : 630
著者 :
koshoujiさん 東野 圭吾   読み終わった 

短編集は、その名の通り「短編」を集めたものだから、すべてが良い作品とは限らない。
この本は、「透視す」「曲球る」「念波る」「猛射つ」の四作から成っている。
全体として星4個なのであり、「透視す」「曲球る」「念波る」は3個で、「猛射つ」だけが星5個の評価だ。

前作「虚像の道化師」に続いてのガリレオ湯川先生の短編集だが、初期の頃よりスケールがこじんまりした感は否めない。
全体のストーリーよりも、単に新しいトリック発表の場、“ハウダニット”のみに重きを置いたような作品が多い。
ゆえに推理小説(ミステリー)独特の味わいである、手に汗握るような緊張感がそれほど感じられず、物足りなさが残る。
湯川先生と草薙刑事や内海刑事のやりとりの面白さや、湯川自身の頑固なまでの科学への思いも、さほど作品内から伝わってこない。

ただし、このなかでも最後の作品「猛射つ」だけは別格で、ほかの作品よりページ数が多く、中篇とでも言ってよい長さのせいか、物語に奥行きがあり、“ホワイダニット”も深く掘り下げられ、(この程度の推測に基づいたあやふやな動機で殺人に至るだろうか? という疑問も多少あるが)湯川先生の少年に対する信頼や実直な行動の必然性も理解でき、最後はほろりとさせ、感動さえ覚える。
この「猛射つ」は、数あるガリレオシリーズのなかでも、最高傑作『容疑者Xの献身』に続く名作の感がした。

トリックに重きが置かれる作品だけに、(純粋にトリックの謎解きを楽しむ読者は別にして)ことさら登場人物の背景や心情、動機の部分を詳細に描けるだけの長さが必要で、もはや短編では難しい気がする。
そこが丁寧に描かれていないと、読者も深く共感できず、一級品となりにくいのではなかろうか。

この事件のあと、湯川先生はニューヨークに行き、しばらく戻らないようだ。
しからば、その間、東野先生にはじっくりと構想を練ってもらい、次なる長篇に再び期待したい。

レビュー投稿日
2012年11月14日
読了日
2012年11月13日
本棚登録日
2012年11月4日
3
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