朝が来る

3.87
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本棚登録 : 3438
レビュー : 578
著者 :
koshoujiさん 辻村 深月   読み終わった 

「本の雑誌」を読んでいたら、「本の雑誌が選ぶ2015年のベスト10」発表という座談会の冒頭で、この「朝が来る」が真っ先に推薦された。
(最終的には第三位になったけれど)
そういえば───この本のレビューを書いていないことに気付いた。

「スロウハイツの神様」や「名前探しの放課後」を読み終えた後、あまりの感動に号泣し、何度も何度も最終章あたりを読み返し、それ以来、ファンになった若き天才作家“辻村深月”。
しかも、女性の奥底のドロドロとした心情を描く“黒辻村”作品ではなく、いつも最後に涙が頬を伝わり落ちる“白辻村”の作品だったというのに。

何故に書かなかったかな? 
この本を読んだ頃は、出張ばかりで、仕事がやたらと忙しく、お決まりの「冒頭部分の引用」さえもできなかったからだ。

と、ここまで書いて、とりあえず「朝が来る」とタイトルを付けてワードで保存しようとしたら“同じ名前の文章がすでにあります”という“アラート”が出た。

うん? 書いたのか? ブクログに載せていないだけだったのか? 
と思いながらファイルを開くと、ほんのさわり部分だけ書いて、途中でレビューは終わっていた。

───読了後、涙が止まらなかった。
いつの間にか、“ひかり”に感情移入していた。
ラストで救われた。
先も気になるけれど、それまでの展開から想像しそうになった悲しい終わり方でなくてよかった。

ひかりは、可哀想な子だと思う。───

これだけだ。
でも、今あらためて、このレビューの書き出しを読むと、この短い文だけでも、この作品の素晴らしさを鮮明に思い出すことが出来る。

───子供に恵まれず「特別養子縁組」という手段を選んだ母親。
───子供を産みながら、手放さなければならなかった中学生の母親。

その狭間で、純粋無垢に育った可愛らしい男の子。

手元に実際の本がないので、それぞれの固有名詞は忘れてしまったが、あわやという場面で、“ひかり”が救われたシーンが脳裏に蘇って来た。
たしか「みーつけた」というような台詞があったように思う。
このシーンを読んで、涙があふれ止まらなくなったのを覚えている。

「闇が深ければ深いほど、最後は明るい光が射し込んでくる。これからも気取ることなくハッピーエンドを提示していきたい」
作者である辻村深月は、2009年7月に発行された文芸誌「野生時代」のインタビューで、そう語っていたはずだ。

それが何故か直木賞を意識し始めた辺りから、作風が変わった。
女性の嫌な内面を炙りだすような作品を世に出し始めた。
彼女にどういう心境の変化があったのか、ぼくには分からない。

彼女はその路線の作品「鍵のない夢を見る」で直木賞を受賞した。
文学的観点から見れば、その作品のほうが完成度は高いのかもしれない。
でも、それまで彼女を支えてきた、或いは彼女のデビュー時からのファンだった読者は裏切られた気持ちになったのではなかろうか。
ぼくたち、わたしたちが読みたいのはこんな「辻村深月」ではない、と。
「ベタでも、ハッピーエンドを提示する作品を書いていきたい」
と言っていた彼女は何処に行ったのだと。

彼女自身もそれを薄々自覚していたようで、その後「白辻村」「黒辻村」と分類分けされるようになった作品群を発表するとき、「白辻村」路線の作品を書いた時には、“昔からわたしを支えて来てくれたファンの方のために書きました”という発言もあった。

小説というものの存在意義は何処にあるのだろう。
あまりに難しすぎて、とてもいい加減なことは書けないけれど、ごくごく個人的な希望だけを言えば、ぼくは面白い小説が読みたい。

面白いという言い方には語弊があるかもしれないけれど、読み終えて、心が豊かになる。カタルシスを覚える。感動の涙でむせび泣く。
この本に出逢えて良かった。まだまだ人間も捨てたものじゃない。
そんな気持ちを抱かせてくれる小説を読みたいと思っている。

辻村さんの初期の作品群で抱いたぼくの感想はそういうものばかりだった。
そして、そのような感動を覚える小説家の作品には、なかなか巡り合えない。

だから辻村さん。
今後もできるだけ多くの「白辻村」路線の作品を世に送り出して欲しいと願っているのです。
そんな小説を読み終えたとき、頑張ろう、頑張って生きていこう。
そう思えるような、優しい光が射し込んで来る気がするのです。
これからもよろしくお願いします。<(_ _)>

レビュー投稿日
2016年1月5日
読了日
2015年7月20日
本棚登録日
2016年1月5日
9
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『朝が来る』のレビューへのコメント

杜のうさこさん (2016年1月6日)

koshoujiさん、こんばんは~♪

あけましておめでとうございます!

待ってましたよ~!!!
なんと4か月ぶりとは!

私も辻村深月さん、好きな作家さんなんですが、
このレビューを拝見して、好きなんて言えるほど読み込んでないなぁって思いました。

どちらかといえば遅読なので、
読みたい本がありすぎて追われてしまうのも原因の一つなんですが。

今年はもっと一冊々をじっくり読みたいです。

素敵なレビュー、バンバン書いてくださいね♪
期待度Maxです!

今年もどうぞよろしくお願いします(*^-^*)

杜のうさこさん (2016年5月9日)

koshoujiさん、こんばんは~♪

業務連絡(笑)、了解しました~!
いつもうれしい情報ありがとうございます!
全然知りませんでした。
どうもその手の情報に疎くて。
安田成美さん、美しい演技派の方で良かったです♪
楽しみですね!
好きな作品が映像化されるのは、大歓迎なんですが、
キャストが残念だと、がっくりしますからね。

そして、
>「このカードは認識できません」と機械は宣うのである。もう一度入れ直したが、同じことを言いやがる(交換機が)。

この瞬間、またしても??と、わくわく(笑)

>「ふざけるな!! グルルルル!!」と狼のように吠えたかったが、

「吠えて下さい~~!」(笑)

最近どうも、センパイのアクシデントに期待してしまう悪い癖がつきました(笑)
完璧な人の”やらかし”が楽しみな、ギャップ萌えの悪魔です!(笑)

杜のうさこさん (2016年5月9日)

キャー、センパイ!
いいね!ありがとうございます!

「あんこ好き仲間増殖計画」にご協力くださったんですね(笑)
ためしに、センパイもビールのおともに、
あま~いあんこいかがですか?^^

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