明日の子供たち

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レビュー : 651
著者 :
koshoujiさん 有川 浩   読み終わった 

冒頭───
 九十人の子供が住んでいる家がある。
『あしたの家』───天城市立三日月小学校から程近い場所に存在する児童養護施設だ。
 様々の事情で親と一緒に住めない子供たちが、一つ屋根の下に暮らしている。
 昨今ではより「家らしい」少人数の施設が主流となっているが、『あしたの家』は設立が古く、当分の間は大舎制と呼ばれるこの大規模施設として運営される予定である。
 施設には子供たちから「先生」と呼ばれる児童指導職員が宿直制で二十四時間常駐している。
 そしてその日、三田村慎平は希望に溢れて『あしたの家』に着任した。
 残暑がようやく過ぎた秋晴れの一日だった。
 

───有川浩は優しい。

児童養護施設で生活する職員と子供たち。
親からの虐待や育児放棄などによって、仕方なく養護施設に預けられ、生きていかねばならない子供たち。
親の愛にも恵まれず、経済的にも苦しく、将来の道への選択肢も狭められ、自由の少ない子供たち。
その子供たちを“親と離れて養護施設に入らされてかわいそう”と言うのは誤りだ。
子供たちは、養護施設に入ったおかげで、夜ぐっすり眠れて、三食きちんと食べられ、本を読んだり、勉強する自由も与えられるのだ。
つまり、そんな普通の家では当たり前のことができないほど、家庭の環境が過酷だったということだ。
だから、安易に“養護施設に入ってかわいそう”と思ってほしくないと言う。
新人指導職員の三田村。
先輩女性職員の和泉。
ベテラン職員の猪俣。
『日だまり』の間山。
そして、高校生の奏子と久志も。
それぞれ想いのベクトルは異なるけれど、自らの信念の基に、目の前にある問題に真摯に向き合う姿は似ている。
人間が、一生懸命に前に向かって歩いていく姿のなんと清々しいことか。
彼ら、児童養護施設に関わる人たちが、そんな想いをずっと抱いて行動を起こせば、世の中は変わっていくのかもしれない。

『あしたの家』の“今日の子供たち”が“明日の大人たち”となって、真っ直ぐに懸命に生きて行ってくれること祈らずにはいられない。
読了後、そんなことを思った。
久々に本を読んで、涙が零れた。

この作品は、実際に児童養護施設の子供から届いた手紙を読んで、有川さんが小説に仕上げたらしいが、こういう素敵な作品になって、手紙を送った当人も喜んでいるに違いない。
願いに応え、こういう作品を創作する有川さんも素晴らしい。
この作品を日本中の多くの人たちが読んでくれることを願う。

レビュー投稿日
2014年8月22日
読了日
2014年8月21日
本棚登録日
2014年8月20日
16
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