百瀬、こっちを向いて。

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本棚登録 : 1652
レビュー : 396
著者 :
koshoujiさん 中田 永一   読み終わった 

乙一氏の別名小説。
彼は変わった作家だ。
別名で違う作風の小説を発表している。
この「百瀬、こっちを向いて」も、出版当初はその正体が明らかにされなかったらしい。
彼の作品は「箱庭図書館」を読んだことがある。
といっても、それは一般の人が書いた作品を彼が推敲し、小説として書き直したという一風変わったもの。
いわゆる小説の作法、入門、基本的なことを修正しながら、作品を別物に仕立て、発刊したものだ。
なので、彼自身のオリジナル作品を読むのはこれが初めて。
ブクログのお友達のレビューから「爽やかな青春小説」という評判を目にし、図書館から借りた一冊。

表題作のほかに「なみうちぎわ」「キャベツ畑に彼の声」「小梅が通る」の四篇を収録。
四作品とも、読後、ほろ苦さと切なさが胸に染み入るような青春恋愛小説だ。
タイトルの「百瀬、こっちを向いて」は高校一年生、15歳の男の子の心情がよく描かれている。
自分もこんな時代があったなあ、と遥か昔を思い起こした。
告白なんて簡単にできる時代じゃなかった。
当時の私の街の高校はすべて男女別学。出会いのチャンスといえば、年に一度の文化祭がせいぜい。
夏休み明けの九月。精一杯おめかしして女子高の文化祭に行ったっけ。
でも、その場のひと時だけの楽しい時間を過ごすだけでいつも終わり。
夕闇迫る中で行われる文化祭のフィナーレ、キャンプファイヤー。
何ともいえない哀しさが胸を締めつけた。
もう一度あの頃の時代、胸がキュンとするような気持ちに戻りたいものだ。
一目ぼれした○○さん、今頃どこでどうしているだろうか……。

個人的に好きなのは最後の「小梅が通る」だ。
少女が、美しすぎるが故に、同性から嫌われ、友達もできず、
「あなたのことをほんとうに好きになるひとなんていない。外見が好きになるだけだ」と言われ、傷つき、自分の外見を封じ込め、とにかく目立たない道端の石ころのように生きていこうと決意する。
そこに現われたいまひとつ垢抜けない同級生。
自分の外見を思わぬところで知られたものの、同一人物とは気づかれないところから、妹と名乗ることで話が展開していく。
とてもいい感じの話です。
ほろ苦くて、甘酸っぱくて、心がほのぼのしたい時に読むにはオススメ本です。是非。

レビュー投稿日
2012年9月27日
読了日
2012年9月26日
本棚登録日
2012年9月25日
4
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『百瀬、こっちを向いて。』のレビューへのコメント

まろんさん (2012年9月28日)

おお、koshoujiさんも読まれたんですね!
高校生たちの不器用さがいじらしくて、
ほんとうに「ほろ苦くて、甘酸っぱい」物語でした。
おめかしして女子高の文化祭に出かけ、
ドキドキしながら一目ぼれしたマドンナを見つめるkoshoujiさんが目に浮かんで
笑みがこぼれてしまうような素敵なレビューでした(*'-')フフ♪

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